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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
完結おめでとうございます。
08/03

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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです17 

2 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/21(木) 23:56:47.71 ID:eBPpnD4f0
17.二人だけの世界

一九九五年。九月十日。新学期が始まるも、なおも照りつく太陽に苛立つ頃。

授業はもう長期休みなど忘れたかのように進んでいくけれども、
生徒たちのエンジンが暖められているはずもない。

その温度差のせいで、叫びに似た軋みが校舎じゅうに響いているようであった。


ζ(゚ー゚*ζ


それでもしかし、内藤邸でデレはしゃがみ続けていた。

ただもう、ぼんやりとしているか過去の輝きを求めているかで、
さしあたっての未来など何一つ望まない。

父の説得も虚しいままに終わるし、妹の蔑む視線などもはやどうでもいい。

知っていて酒に溺れていくような、怠惰な生活……。




3 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:00:22.00 ID:Fi3oK7Ok0
しかしまた、それも最初のうちは楽しかった。

たんなる意地という部分も強かったし、悪戯心もくすぐったかった。

けれども時がたつにつれ、休日の悦びに慣れてしまったころ、
いきなり自分の醜い憎悪に気付かされた。


ζ(゚ー゚*ζ


ギコへのやるせない気持ち、そしてクラスメイトへの憤りが、
たちまち押し寄せて来、自分の立ち居地は袋小路なのだと自覚していった。

物寂しくなった。
内藤の呼びかけに、世間の常識に聞く耳を持つ余裕など失せていた頃である。

この、奇妙な形をした自宅の一角でしか、私は生きていられないのだと悟ってしまった。




「いやだ!!」



     


5 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:02:20.52 ID:Fi3oK7Ok0
彼女の心を支えることになったのは、読書と、クーのお見舞いとなった。

前者は書斎に身をゆだねて、活字に目を通すのが主であった。
母の残した書物は、血もあってかデレの趣味によく合い、読破数が日増しに増えていった。

後者は毎日三時になれば訪れた。
学校が終わればすぐに内藤邸を訪れるらしい、たびたびクーは健気にデレを慰めた。




川 ゚ -゚)「ねぇデレ、しぃ達なんかもういいじゃないか。
     このままじゃズルズル学校を休むことになるよ」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、でも……」

二人しかいない居間で、そんな風に言葉が続いた。


6 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:05:04.37 ID:Fi3oK7Ok0
川 ゚ -゚)「デレ。あいつら今じゃなんとも考えちゃいない。
     あの低能たちはどうやら、もう出校日のことなんて忘れちゃったらしい」

ζ(゚ー゚*ζ「でしょうね……」

川 ゚ -゚)「なら、こっちも忘れてやろうよ。あいつらを眼中に入れること自体、いや、存在自体。
     人間として扱うことが、そもそもの間違いだったんだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「………」


押し黙るデレに、クーは畳み掛けるように並べ立てた。

川 ゚ -゚)「ちょっかい回避だって、わたしマスターしたんだよ」

川 ゚ -゚)「デレにも見せたいよ、あいつらの呆れた顔とか、ちょっと淋しそうな顔とかさァ」


川 ゚ -゚)「でもさ、それはホントはどうでもいいんだ。しょうじきね、つまらないんだ」

いつしか感情がこもりはじめた。

川 ゚ -゚)「だからさ……戻ってきてよ、デレ。
     わたし、淋しくってたまらないんだ。いつも教室では寝た振りだよ」


・・ ・・・


7 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:08:16.48 ID:Fi3oK7Ok0


一九九五年。九月二十日。空はいつしか太陽より月を好みだした。


いよいよデレは、やつれていった。


学校へ行きたいとは思わないが、
しかし同時に、毎朝を迎えるたび自分に嫌気が差した。焦燥感が駆けた。

自分に残された足場から、レンガが一つずつ抜き取られていくような感覚だった。


もう引き返せない。



    


9 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:11:37.01 ID:Fi3oK7Ok0
「……デレ、ここをあけてくれよ」

ドア越しからクーの懇願が届いてくるが、デレは俯いたままベッドの上でうずくまっていた。

「どうしたの最近……顔を見さしてよ」

ζ( ー *ζ「(やだ、いやだ)」

このごろのデレはやせ細っただけに留まらず、情緒不安定な類にも陥っていた。
調子の波さえ悪ければ、親友のはずのクーにも会いたがらない。

その日のクーは、ついにデレを顔を見合わせることもできず、
侘しいまでにことばをおくったのち、帰宅したのだった。

授業が終わればまっすぐデレに会おうと足取りも軽かっただけに、
クーは未練がましく何時間も彼女の部屋の外で待ち続けていたが、
六時も回ったころになって、とうとう諦めもついたらしい。


朱いろから橙いろに薄れがかった夕日に視界を染め上げられながら、
デレは、帰路につくクーの後姿を窓から覗き続けていた。

ζ( ー *ζ「(クーちゃん……)」

      


10 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:15:22.68 ID:Fi3oK7Ok0
九月も終わりを覗かせるくらいだから、空もすばやく藍いろに移りかわる。
クーの影もみえなくなる。

ほとんど外に出ないデレなので、天候についてはまるで詳しくないが、
北風はすでに厳しいらしい。

街路樹のしなりは目に余るほどで、耳にもその音はうっとうしい。

そんな空気のなかで、ひとりトボトボと歩くクーを想像すると、
デレはいたたまれないと思う一方で、己を恥じた。


彼女はどんな気持ちで足を動かしているのだろう。


クーの心までもを淋しくさせたのは、ほかならぬデレ自身なのだ。


ζ(;ー;*ζ「ごめんなさい!」

デレはするどく泣き叫んだ。明日、クーがまた来訪したとして
きちんと迎えられるか確証も持てない、そんな自分に嫌気がさした。

                 


11 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:18:49.11 ID:Fi3oK7Ok0
ζ(;ー;*ζ「ほんっと生きる価値ないね……!」

吐き捨てるようにそういった。

卑下しているのは無論のことで、他にもまだまだ罵倒の言葉をいいたかったのだが、
感情がたかぶり過ぎて、声がどうしても続かない。


ζ(;ー;*ζ「ごめんね、ごめんね、こんなんでごめん……」

切れ切れにそれだけ呟きおえると、たどたどしく部屋を後にしようとした。
書斎にこもって、書物の世界に逃げ込みたかった。

しかし、ちょうどドアノブに
手をかけた辺りで、ガレージに内藤の車が駐車する気配がした。

ζ( ー *ζ「(あ……)」

いっしゅん硬直すると、デレは部屋を出るのもあきらめて
ベッドに方向をかえてそのまま布団へ滑りこんだ。


デレはあいかわらず泣きじゃくっていた。
クーと父への申し訳なさで、頭がどうにかなりそうになった。……


13 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:22:36.95 ID:Fi3oK7Ok0


「あけるね」
「ありがとう……デレ」

デレは、震えをこらえて自室の扉を開いた。

廊下に立っているのは紛れもなく自分を思ってくれている人だし、
昨日の反省も踏まえて、うなだれた毎日にピリオドを打ちたかった。

ただ、それでも人を顔を合わせるのには緊張する。

川 ゚ー゚)「やぁ」

目が合うと、たちまちクーの顔はパっと紅潮した。
いまにもデレを抱きしめそうなくらいの上機嫌さで、すらっとした風にデレの部屋にあがりこんだ。

デレも必死の作り笑いで対応した。
クーとゆんたくするのは紛れもなく嬉しいことだけれども、
動悸だけはおさえられそうにもない。

クーがカーペットの上でへたり込むその一瞬をねらって、すばやく深呼吸をする。

申し訳ない気持ちになるが、仮面のような笑顔なんかをこれ以上みせるわけにはいかない。

            


15 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:25:40.68 ID:Fi3oK7Ok0
川 ゚ー゚)「今日も大変だったよ」

笑顔でネガティヴに切り出した。
いかにも、それは彼女の流儀のようなものだが、通じる人間といえばデレぐらいなものであった。

ζ(゚ー゚*ζ「毎日大変だね……」

川 ゚ー゚)「とにかくしぃ達がどうしようもなくってね」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんと……」

川 ゚ー゚)「そうなんだ、今日ったら現代文の貞子先生を泣かせたんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「どうしようもないね」

身振り手振りをまじえ、クーはただもう暗い話を続けた。

川 ゚ー゚)「それで自習になったんだけど、その間もギャーギャー喚いて……猿と同じ教室なんて、イヤになっちゃう」

ζ(゚ー゚*ζ「猿ね……」

と、こんな風にひたすら愚痴の言い合い……といっても、ほとんどがクーの振りなのだが、
ともかくとして、そうして話は進んでいった。

       


16 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:29:49.15 ID:Fi3oK7Ok0
川 ゚ -゚)「おっ」

クーが、ベッドの上で転がっている文庫本に目をつけた。
しおりもキチンと挟まっているそれの背表紙を読み上げると、きらきらした目で、

川 ゚ー゚)「私の読んでない作家だ」

ζ(゚ー゚*ζ「お母さんの残した本なんだ」

川 ゚ー゚)「へえー、どれどれ」

と、立ち上がって表紙も裏も撫で回した。
母の残した本だが、ずいぶん丁寧に扱っているらしく、汚れはそこまで目立たない。

川 ゚ー゚)「"少女地獄"ねぇ……物騒なタイトルじゃない」

ζ(゚ー゚*ζ「えへへ、でもそのタイトルに惹かれちゃって」

川 ゚ー゚)「うん、わかる」

頷いてから、クーはその文庫を戻した。
さっきより幾分もデレに詰め寄って座りなおす。


川 ゚ー゚)「地獄だ」

          


18 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:33:32.98 ID:Fi3oK7Ok0
ζ(゚ー゚*ζ「え?」

川 ゚ -゚)「私ね、思うんだ。この生きている場所が地獄だから、まともな自分達は苦しんでいるんじゃないかって」

まじまじとデレを見つめながら、不吉なことをいきなり喋りだした。

川 ゚ -゚)「だっておかしいじゃない。デレは、こんなにも純粋で、人を愛せるのに」

ζ( ー *ζ「そんなことないって」

恥ずかしさと虚しさとで顔を下に向けたが、クーは"いや、そうだとも"と首をふって、

川 ゚ -゚)「母のような心を持っているのに……清らかなのに、どうして苦しんでいる?」

ζ( ー *ζ「………」

川 ゚ -゚)「私だって、人並には全うに生きているよ。すくなくとも、しぃ達なんかよりはよっぽど」

川 ゚ -゚)「でも、現状を見てみれば、私やデレは迫害されている。……これは、世界のほうがおかしいから……」

ζ( ー *ζ「そう、かな」

川 ゚ -゚)「そうだよ」

より一層、クーはデレに近づいた。
吐息も肌で感じられるほどな状態のまま、まだ喋り通した。

           


20 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:36:59.28 ID:Fi3oK7Ok0
川 ゚ -゚)「おかしいのは世界さ」

川 ゚ -゚)「私はいつも考えてた。"どうしてこんなに生きるのが虚しいんだろう"って」

川 ゚ -゚)「でも、デレに会ってからはそんなこと、どうでもよくなったんだ」

川 ゚ -゚)「世界がどうだろうと、デレが居れば……ね。構わないと思えるようになったんだ」

デレはそれでも謙遜のように視線を落としたが、クーの瞳はただデレの仕草をみすえていた。

川 ゚ -゚)「輝いていた。どんだけ迫害されようが、、、デレと一緒のとき、私はだれよりも幸せだった。
     ……二人だけの世界で、私はいつもヒロインになれた」


そこまでいうと、クーはとつぜん声を低くして、

川 ゚ -゚)「でも今はつまらない。気がつけば、私はまた地獄に取り残されている。。。」

デレの表情は苦悶にゆがんだ。

クーを助けたいのは山々だし、彼女に幸せになってほしいとも願うが、
そうなると自分は登校しなくてはならなくなる。

八方美人特有の板ばさみに苦しんでいた。


川 ゚ -゚)「……もちろん、私はまずデレの幸せを考える。だから、デレが自分を決めればいいけど……」

と、クーはフォローのように付け足したが、かえってこの言葉は板ばさみに拍車をかけさせた。


22 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:40:04.33 ID:Fi3oK7Ok0
そうこう話したのち、黄昏どきも顕著になった辺りでクーは別れを告げた。
昨日と比べるとはるかに若々しい表情と声で、いかに満足したのかが窺えた。

恍惚した眼差しで門を潜りぬけたのは、背中しか見ていないデレでも確信した。


ひさびさに玄関から見送ったが、たしかにこの頃は、もう風が切り裂くように激しい。

ζ(゚ー゚*ζ「……さむい」

クーが見えなくなったあたりで、暖房のやさしい自分の部屋に駆け込んだ。
はやく、あの小説を読まなくちゃ。


クーが興味を示したあの文庫を手に取ると、かすかな笑みを口の端にあらわしながら、
デレは、ゆっくりとページをめくった。


少女地獄。この題名を頭の中で丁寧に思いえがく。




24 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:43:05.74 ID:Fi3oK7Ok0

デレは、もう数え切れないほどこの小説を読み通してきた。

少女地獄は三つのおどろおどろしい短編のオムニバス形式で、
それぞれに「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」という題名が付されているが、

とくにデレが好んだのは三つ目の「火星の女」であった。


一人の少女が親友と共に、命を賭して虚しい復讐劇を演じるというシナリオで、
デレは、なかでも主人公の心情描写を好んだ。


そうして、デレの目にいきなり飛び込んだのは、まさにその描写のシーンであった。

    


28 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:47:15.44 ID:Fi3oK7Ok0
なんどもなんどもその文面には目を通してきた。
そこでデレは、ふと、朗読したらどうだろうと思い立った。


本を頭上にかかげ、ベッドの上で寝転がりながら、か細い声で切れ切れに読み上げた。……


ζ(゚ー゚*ζ「……私の心の底の底の空虚と、青空の向うの向うの空虚とは、
      全くおんなじ物だと言う事を次第次第に強く感じて来ました。
      そうして死ぬるなんて言う事は、何でもない事のように思われて来るのでした
 
ζ(゚ー゚*ζ「宇宙を流るる大きな虚無……時間と空間のほかには何もない
      生命の流れを私はシミジミと胸に感ずるような女になって来ました。
      私の生まれ故郷は、あの大空の向うに在る、音も香もない虚無世界に違いない事を、
      私はハッキリと覚って来ました

ζ(゚ー゚*ζ「大勢の人々は、その時間と空間の大きな大きな虚無の中で飛んだり、跳ねたり
      泣いたり笑ったりしておられるのです。
      同窓の少女たちは、めいめいに好き勝手な雑誌や、書物や、活動のビラみたようなものを持ちまわって、
      美しい化粧法や、編物や、又はいろいろなローマンチックな夢なんぞに憧憬れておられます

ζ( ー *ζ「……甘い物に集まる蟻のように、
      または、花を探しまわる蝶のように幸福に……楽しそうに……」


最後の最後の一文は、感情がたかぶってしまい、つっかえつっかえだったが、
どうにか全てを朗読し終えると、疲労感と芳しい激情が次第次第に心地良くなってきた。

      


29 : ◆tOPTGOuTpU :2008/08/22(金) 00:49:45.26 ID:Fi3oK7Ok0

文庫を閉じて枕の近くにやさしく放ると、寝返りを打った。

そのベッドは、紛れもなくギコとの痴態を繰広げた舞台だと思い出すと、
瞼を閉じずにはいられなかった。



ζ(-ー-*ζ「ギコくん……ギコくん……」

 

はたして自分が、どんな感情で例の男の名を口に出したのかは、

当のデレ本人にも分からないことであった。……



                              (二人だけの世界 終)



 
 
 
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