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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
完結おめでとうございます。
08/03

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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです10 

4 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:36:48.34 ID: 1dbFQ8gj0

10.「心母少女 1」(第三章)


           ドードーナの森に身を寄せて。


 


「今日はここで死のうかしら」


 プルトニーは川辺にたつと、ほほんでつぶやいた。

といっても、じっさい毎日毎日死んでいるわけではない。

死に場所をもとめてさまよっているうち、ついつい口ぐせとなってしまったのである。


 たとえば、そびえたつ教会の鐘を見上げては、そこから飛び降りたらしねるだろうと空想にひたり、

たとえば、巨大なかまどを見つけては、そこに入れば骨まで灰になるかしらんと考えたり、


たとえば、この川辺から身をなげうったら、海にかえるまでもなく息絶えられるかも、などと

かんがえを巡らすうち、本当に自分がそういった自殺をとってしまったような錯覚に、

プルトニーは陥ってしまうのである。


 死に場所をもとめて旅にでたのに、さしあたって生きながらえているのはこれによる。

いつのまにか、旅が、妄想をして回るためにあるような気さえするのであった。


けれども、心の傷はいえていない。


 とおくない将来のうち、自分は確実にしぬだろうという自覚は、

たしかにプルトニーの胸のうちに潜んでいた。


 


 
 
 
※今回は劇中劇なのでAAキャラはお休み
 

6 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:39:23.10 ID: 1dbFQ8gj0

 プルトニーはみなもを見続けることに飽きてきた。

そらは曇ってい、翳りに押さえつけられている。

キラキラと水面にうつる、うつくしい万華鏡めいた模様はけっして見られない。


 屈みこむのをやめて、そらした視線のさきに、

うっそうとした深緑の森が茂っていることに気がつく。道らしい道はその中に

続いているけれども、奥のほうは昼とはおもえないほどの暗黒が漂っている。


「森のすだまに誘われるのも、いいものね」


 プルトニーの独り言はたやすく深遠に誘い込まれた。

どうようにプルトニー自身も森へと足を進めていった。

足元の枯れ葉が歩くたびに軋んだが、彼女は気にも留めない。


 森に足を踏み入れたとたん、空気が冷ややかなものに移りかわった。

薄ら寒い。布のローブを着ているにも関わらず、鳥肌を立ててしまうほどであった。


 しかし、空気は澄んでいるといえばいえた。

なにかのさえずりはまったく純粋に耳にとどくし、腕は動かすたびに心地良くなる。


 生き物の気配はする。

けれども、全く姿を見せない辺りにプルトニーは歓迎されていないことを悟った。


「いいじゃないの」


 冷笑を浮かべて森の住民にいって聞かせた。


 


8 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:40:48.51 ID: 1dbFQ8gj0

 川べりのわりに、地面は不気味なほど乾いている。

樹林が水分を吸いとっているのか。

遠くから聞こえる河のせせらぎが、奇異にかんじられた。


 歩いているうち、足元が硬い地面に変化したことに気がついた。

踏み固められているらしい。この辺りは人がよく通るのだろうか。


しかし、それはあまり信じられることではない。

ここ、マイセン河ふきんの住宅事情など、たかが知れているものだが。


 怪訝におもいながら進みつづけていたプルトニーは、そのとき、

薄暗い森のなかで仄明かりを見た。


「あれは……」


 足取りもはやくなる。何があるのだろう。

柄になく浮き足立つ自分に、プルトニーは苦笑した。


 


10 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:42:54.44 ID: 1dbFQ8gj0

 周囲が開けた。

そこには、木造りの小さな家が一軒建っていた。

 プルトニーはにわかに愕然としつつも、その小屋に感心してしまった。

この地上から隔絶されたような、小さなちいさなワンダランドに……。


――ここは、お伽話の世界なのか知ら。


 沈んだ曇り空には似つかわしくない、メルヘンチックな小屋であった。


「こんな……とこって」


 そのワンダランドの唐突な出現に戸惑っているうち、

プルトニーは、家の脇のちいさな薔薇園で一人の少女がたたずんでいることに気がついた。


声をかけるまもなく、少女はゆっくり立ち上がると、ほほえんで彼女に近づいてきた。

 その少女の声は、年のわりには大人びていた。


「まあ、お客様なんて久しぶりね」


「え……」


へどもどするプルトニーへ更に近寄ると、少女は小首をかしげながら、


「わたし、ドローレスっていうの。アナタの名前はなぁに?」

「え、えっと」


 


11 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:45:00.87 ID: 1dbFQ8gj0

 まさかこんなへんぴな地で、人にあうとは思ってもみなかったためか、

言葉がつっかえて出てこない。とまどううち、

プルトニーは少女の問いを返す時間をなくしてしまった。

しかし少女は笑みをくずさないで、水を得たように喋りだしたのであった。


「あなた、どこから来たの? もしかしてエコの街から?」

「いや……その……」

「わたしたちはね、ガラムの小さな集落から来たんだけど」


――わたしたち?


 プルトニーが訊くまでもなく、その疑問は氷解した。

小屋の扉が開き、たんせいな顔だちの少女が姿を現したのである。


「あら、カレット。もう行くの?」


 少女は振り向くと、たちまち大人びた声でいった。

カレットとよばれた少女は、慎重な目つきでプルトニーを見やると、


「うん。……そちらは?」

「あ、だから……」


 プルトニーがなおもへどもどするのに、ドローレスはようやく気がついたように、


「あら! そういえば、まだ名前を聞いてなかったわね!」


 


12 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:48:07.05 ID: 1dbFQ8gj0

 照れ笑いを浮かべるドローレスと無表情のカレットを交互にみながら、プルトニーは

舌をていねいに動かして、たどたどしく、


「……プルトニー、よ。ただの、旅人なの」

「旅人なの?」


 さっそく食いついてくるドローレスに頷き返しながら、カレットのほうへ目を向けた。

揺れ幅こそ少ないが、たしかにカレットも興味を示しているらしい、プルトニーは頷いてから、


「ええ、ただの旅人……。行く先も帰る場所も決めてない、愚かな旅人なの」

「旅人……」


感嘆するドローレスに、プルトニーはいぶかしげに、


「それより、この小屋は一体どうしたことなのかしら?

 マイセン河の、それもこんな傍に建てるだなんて……」

「あら、それなら大丈夫なの」


 ドローレスはあどけない口調で、


「この河で取れるアユの美味しさったら、他にないのよ? ねえ? カレット。

 とくにカレットのとってくるアユなんて、一生わすれられない味なの」

「そういうことじゃ……」

「あら? 環境について訊いてるのかしら? でも大丈夫。

 ここマイセン河はね、古来から人が住んでたっていう歴史があるの。

 遺跡が発掘されるくらいなのよ」


 


13 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:49:26.20 ID: 1dbFQ8gj0

 快活なドローレスの喋りに、プルトニーは辟易しながらもしかし、魅力を感じはじめていった、

ここまで人懐っこい人と出会ったのはひさしぶりだし、

カレットと呼ばれる少女はひどく魅力的である。


 人恋しさが、とつぜん胸に押し寄せてくる。

そういえばここ最近、プルトニーは人とのふれあいを絶っていた。


 普段の自分ならばかばかしいと一笑にふするような考えが、ぽっかりと浮かび上がってきた。

けれど、ドローレスの態度なら、よろこんで受け入れてくれそうな気がする。

 プルトニーは意を決すと、大きく息をすいこんでから、


「あの……なら、でしたら……」

「はい、でしたら?」


 行儀よく応えるドローレスに、安心しつつ、しかし緊張をたたえたまま、


「その……ご自慢のマイセン河のほとりを、しばらく堪能さしていただけないかしら?」


 言い切ると、プルトニーはどっと疲れをかんじた。


 しばらく、沈黙がなだれはじめた。

ドローレスも、カレットもしばし唖然としてしまったらしい。


 駄目なのか……。

プルトニーが後悔を感じはじめたそのとき、ドローレスの表情がぱっと輝いた。


「まあ、すてき!」


 


14 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:52:07.47 ID: 1dbFQ8gj0

 ドローレスの頓狂な声に、プルトニーは不意をつかれて驚いた。

つぎに唖然としだしたプルトニーの手を握ると、うっとりとしながら、


「旅人さんですもの。休息は必要でございましょう?

 じつはわたくし達、ほとんど人付き合いがないものでして、ほんとうに嬉しくってよ。ね、カレット」


 いいながらドローレスは小屋のほうを振り返った。

カレットも表情少なだが、たしかに歓迎しているらしく、小さくうなづいた。

それを確認したとき、プルトニーの心は、急速に安堵でみたされた。

 

――よかった。


 ほっと一息つくプルトニーを、さっそくドローレスは手をひいて小屋の中へ案内した。


 カレットが立ちどまる玄関を潜りぬけ、木造りの床の上をあるきだす。


 粗末なつくりはプルトニーの想像どおりだった。

けれども、この小屋には異様な空気がたちこめていた。

それは愛なのだろうか。

たしかに安らぎを与えてくれているような気もする、けれど、たちまち小さな戦慄がかけのぼってくるのだ。

 

――これは、どういうことかしら。


 本能が警戒しつつも小躍りしていた。

内装にしょうしょう浮いている桜いろのソファに腰かけさせられながら、


プルトニーは、たしかにとまどった。……


 


15 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:55:56.22 ID: 1dbFQ8gj0

 出されたソイ・ティーを味わいながら、プルトニーはドローレスの矢継ぎ早な

質問にこたえていった。


「ええ。いわば自分探しの旅……といったとこですの」


 とはいえ、とうぜんだが自殺の旅だのという物騒な理由はいっさい匂わせない。

心証のわるいことは決していわず、謎めいた旅人だというふうに言葉をつぐんだ。


「でしたら、さまざまな国をまわっていらして?」

「ええ、とはいっても、まだほんの三カ国ほどですけど……」


 言いさして、ふとプルトニーはカレットが部屋からきえていることに気がついた。


「あら、カレットさんは?」

「彼女でしたら、アユをとりにいきましたわ。あなたも是非食べてくだすってね? とっても、美味しいなの」


 うっとりするドローレスに頷いたが、このとき、プルトニーはにわかに落胆してしまっていた。


――カレットさんが居ないだなんて……。


 そう落胆すると、たちまち、ドローレスの質問はたいくつなものへ変わり果ててしまった。


 


16 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/30(金) 23:59:05.35 ID: 1dbFQ8gj0

 そのとき、プルトニーは気付いた。

自分がこの小屋に訪ねたがったのは、

ほかならぬ、カレットを見ていたいがためだったのでは……と。


「プルトニーさん、あなた、いつまでここに居られるのかしら」


 カレットについて考えごとをしていたプルトニーは、いっしゅん答えることにとまどった。

しかし、この問いについては長考する必要などなかった。

死ぬために歩きまわっていたプルトニーには、それこそ時間は、くさるほど残されていた。


「いくらでも、よ。もしあなたがたがイヤになったら、いつでもわたくしを追い出してちょうだいね」


・・ ・・・


 宵闇もすぎると、その小屋にはランプによる薄明るい光が満ちはじめた。

 カレットのとってきたアユや木の実をふるまった夕食は、やはりこじんまりと

しているが、どこか気品がただよっていた。


 じっさい、味も素朴な食材ならではの美味しさで、ドローレスの料理の腕前も、

なかなか侮れない。


 プルトニーは、食事中でも勢いのおとろえないドローレスの話を聞きながしておいて、

ずっと正面席にすわるカレットの動作をみてばかりいた。


 カレットはドローレスとは対照的に、かもくな方らしい。

それなりに話を聞いているのか、たまにうなづいたりするけれども、言葉を発したりはしない。


 


 


17 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:00:50.11 ID: vUon2G+G0

「それでね、あのキノコがとれたところっていうのはね……」


 あいかわらずドローレスの話のたねはつきることがない。

内容はおもに、なにかの花を栽培したときの苦労や喜び、マイセン河のすばらしさなどだが、

どれも、プルトニーの興味からはなれたものばかりであった。


 しかし、カレットはいやな顔ひとつせず、ときおり同意するので、

プルトニーもまったく聞かないわけにはいかなかった。

 

 そうした二人を見くらべるうち、プルトニーは、当初からいだいていた疑問を

言いたくてしようがなくなってしまった。

 

 この状況なら、いっても空気を乱したりはしないだろう。

 そう直感したタイミングになったとき、プルトニーは、つとめて穏やかな口ぶりで、


「そういえば、前々から疑問だったんですけれども」

「あら、どうかしましたの?」


 いきなりドローレスが食いついてきた。

カレットもプルトニーの顔を見つめだしたので、すこし緊張したが、

もつれそうな舌をていねいに動かして、


「この家のことなんですけれども……まず、いつごろからあなた方は住んでいらして?」


 


18 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:04:58.57 ID: vUon2G+G0

「そうねぇ……、いつからだったかしら。そんな何年も経ってないと思うんだけど……

 ねえカレット?」

「うん……五年……とまではいかないけど、それくらいかな」


 プルトニーは、小さなショックを受けた。

何年も、それも二人でずっと暮らしていたことが驚きだった。

カレットの声の、いがいにさび付いた調子ですら聞き逃しそうなほどであった。

 

 動揺をかくしながら、笑顔をわすれずに、


「まあ、そんなに経つんですの……」

「ええ、なんとか生きていますわ」


 頷いてから、いよいよプルトニーはいちばん聞きたかった質問を切り出した。


「それで……どうして、この、マイセン河のほとりなんかに住もうと?」


「それは……」


 じょうぜつだったドローレスは、そのとき、いきなり口ごもってしまった。

カレットもたちまち視線をおとし、プルトニーから離れたそうに縮こまる。


 プルトニーはその状況を見、いたく痛感した。

それは、タブーだったのだと。

聞いてはならない。もしそれを聞けば、この

メルヘンチックな小屋は、とたんにむくろと化してしまうのだ。


 


19 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:07:16.67 ID: vUon2G+G0

 慌ててプルトニーはとりつくろって、


「あ、いや、難しいのなら構わなくってよ?」


 しかしそれでも空気が取り払われないことを知ると、

やおら立ち上がって、


「それでは、すこしお手洗いを借りますわね」


といって、慌てて逃げ出してしまったのであった。……


 逃げるように離れのお手洗いへ向かうあいだ、プルトニーは

心の乱れをかみしめていた。


 どうしようもない恐れ、たといようもない疎外感。

そして、彼女らの真実を覗いてみたいという、じゅんすいな好奇心。


 刺々しいのに、どこか甘美なさわりで、

いつまでもとげに傷つけられてしまいそうな、そんな好奇心であった。


――もっと、あの二人のことを知りたい。


 口のはしをゆがめながら、そう、なんども反復した。


 


20 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:10:41.87 ID: vUon2G+G0

 食事も終わり、どこかぎこちない空気をひきずったまま、

就寝の流れとなった。だんまりしたまま、おのおのの部屋へ向かった。


 プルトニーには来客用の個室が割り当てられた。

ほとんど来客がないのか、非常にきれいであった。

ほこり一つ落ちていない。


 二人は、ふだん通り自室で寝るという。


――気になる。


 その言葉をドローレスに告げられたとき、プルトニーはすぐさまそう考えた。

ぜひ見てみたい。この不思議な妖精たちの寝息をみたい、

かぎ穴に目を押しつけるだけでもいいから……。


 そう願ったせいであろう、満月のうつくしいこの深夜、

プルトニーは眠らずに待ちかまえていた。


――あの二人が、深く眠り込むまで…………。


 森の中だというのに、おそろしく外は静まり返っていた。

けだものの叫びもまったく聞かない。

生き物の気配はあいかわらずするのに、奇妙なことであった。


 


22 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:12:26.83 ID: vUon2G+G0

 時は充ちた。

そろそろとプルトニーは立ち上がると、音を立てずに

部屋を後にした。


 出てすぐ向かいの部屋が、彼女らの寝床であった。


 底冷えのする廊下でプルトニーは立ち止まった。

不審だった。音が聞こえる。


なにやら、くぐもったような、興奮をかりたてるような、本能的な、声……。


 いやな予感がする。

しかし、すごすごと引き下がれるわけはない。

声はしだいしだいに大きくなっているから、プルトニーが

起きたことに気がついてはいないらしい。


――むしろ、わたしの存在を忘れているに決まっているわ。


 大きく息を吸いこんでから、プルトニーは扉の前まで詰め寄った。


 


24 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:14:37.40 ID: vUon2G+G0

 背筋をのばしたまま、指をドアノブふきんで這わせた。

すぐにかぎ穴の窪みを発見する。しゃっくりに似た笑いがした、


「………ぁア…」


 そのとき、カレットが愛らしい声をあげたので、

プルトニーはたちまち衝動にかられそうになった。


 興奮をおさえ、息を押し殺して、ゆっくりした動作で

目線をかぎ穴にまで近づけた。


 顔の皮ふが真鍮と触れあった。

冷たいかんしょくで思わず目を閉じそうになってしまう。


――見たい、見たい……。


 はやる気持ちをおさえ、プルトニーはかぎ穴ごしの世界を

まじまじと見つめた。


 小さなベッドが一つ、中央に置かれていた。

そのうえを、白い肌の"なにか"が、同じく

白い肌の"なにか"を求めている。


 


25 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:17:13.33 ID: vUon2G+G0

 "なにか"が誰なのか、……その二つのうち、どちらが

彼女でどちらが彼女かは判別できないにしろ……

たちまち、理解した。


 なにを、しているのかも。


「………」


 プルトニーはつばを飲み込んだ。

ああも生々しい痴態をみるのは久しぶりであった。

しかも同性同士とくれば、初の出来事である。


 ときおり飛んでくる喘ぎ声が、

そのたびそのたび、プルトニーの胸を打った。


 もっと聞きたくもなったし、もうやめてと泣き叫びたいような気もする。

しかしそれより、その喘ぎ声が、どちらが発しているのかすら

わからなくなってしまったのがむしょうに悔しい。


 胸が苦しい。熱っぽくて目眩もする。

原因ははっきりしている。目の前の光景である。


それでも見るのをやめられないのは、愛に他ならないだろう。


 


26 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/31(土) 00:19:21.33 ID: vUon2G+G0

 目を見開きつづけたせいか、それとも別のりゆうか、

涙が溢れてき、真鍮をわずかにぬらした。


 過呼吸になりそうであった。身体がこきざみに篩え、吐き気に似た

感覚が腹のそこからつたわって来る。


 


 もし、かりに二人が永遠にまぐわい続けたら、

永遠にのぞき続けたろう。


 


 プルトニーはあせばむ掌をぬぐいながら、つよく確信した。


                      「心母少女 1」 終


 


 


 
 
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