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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです9 

2 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:30:06.09 ID: 9dZxI4QW0

9.過剰の美学


一九九五年、七月三日。いまだ雲は払われず、薔薇の栄華も極め渡る頃。

ことにヨーク・アンド・ランカスターが女学校の校庭に咲き誇っているのは、なにかの不吉を伝えたいのだろうか。


・・ ・・・


まさしく神秘的だった。

ギコは優しいし、なにより逞しい。

喫茶店で会話をしたあの日から、デレとギコは二人きりで遊びだした。


デレに、男の子と遊ぶ経験は今までまるで無く、ギコとのひと時は全て新鮮に感じられたし、

強引なその腕の引き具合や笑顔の力強さは、デレを興奮させた。


 


しかし、対照的にクーの表情は翳りを増していった。

交換日記も、学校へ持って行くことを何度も「忘れてしまった」り、出すのを躊躇ったりしている。


デレは何度も心配したが、そのたびにクーは弱々しく笑ってみせ、


川 ゚ -゚)「大丈夫だ」


しかしその一言には、何の活力も見出せなかった。


 



4 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:32:50.45 ID: 9dZxI4QW0

デレがそれでも気をかけると、

「あれが来ない」だの、「家のグラジオラスが病気になった」だの、躁めいておどけるのだが、

彼女のそういった挙動は誰も目から見ても、甚だ可笑しい。


そのなかで、ごく稀にこんな言葉を溢した。


川 ゚ -゚)「迷ってたりね。天稟にかけてるんだ。どっちの幸せがいいか、だなんて」


デレが真意を尋ねると、またも「レッドアイとシャンデー・ガフ、どっちを飲むか迷ってる」だの惚けたり、

「それよりパールのチョーカーは大丈夫か」だのと話をはぐらかしたりするので、

時が経つたびにギコチナさが増すばかりであった。


ζ(゚ー゚*ζ「………」


川 ゚ -゚)「ははは、はは、大丈夫だよ、実は二日酔いだったりして」


気さえ許せば狂笑するに違いない……そんな表情を浮かべながら、


川 ゚ -゚)「交換日記、忘れててごめん。でも、いずれまた毎日渡せるから」


会話が終了すると、クーは去りゆくデレの背中を見つめながら、

声には出さず、まじないのように呟いた。


川 ゚ -゚)「ギコ、……ギコ、……ギコ、ねぇ」


 


5 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:35:24.38 ID: 9dZxI4QW0

・・ ・・・


(,,゚Д゚)「だからァ、これはな、タイミングなんだよ」


勿体ぶって講釈しながら、ギコはクレーンゲームを手際よく操作していく。

ゲームセンター特有の騒々しさの中、デレは一心にクレーンの行く先を見つめていた。


ζ(゚ー゚*ζ「あっ!」


ギコの動かすアームが、シッカリとぬいぐるみを掴み終えた。

レールが戻される間中、嫌がらせのようにガタガタと震えるが、景品が落ちる気配はない。


シューターに落とされ、そのまま取り出し口に現れたぬいぐるみを、デレはいち早く取り上げた。


ζ(゚ー゚*ζ「すごいねっうまい!」


(,,゚Д゚)「へへ」


ギコは、デレのぬいぐるみを抱きしめる仕草を見つめながら、満足そうに唸った。


(,,゚Д゚)「でも、なんでそんなぬいぐるみが欲しかったんだ?」


 


7 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:38:31.53 ID: 9dZxI4QW0

そのぬいぐるみとは、牛をデフォルメした、ごくありふれたものだったが、

後ろ向きに振り返っているという、変わったポージングをしてい、ギコの目には

まるで良いものと映らない。


ζ(゚ー゚*ζ「これね……」


愛しい我が子の面倒を見るように、胸のうちのぬいぐるみを撫でながら、


ζ(゚ー゚*ζ「クーちゃんが言ってた子と似てたから、プレゼントしようかなって」


(,,゚Д゚)「え、ああそうなんか」


そういえば、ギコはクーとは面識がなかったはずだ……デレはそう思い返すと、

ギコの戸惑った様子にも納得がいき、補足するようにして、


ζ(゚ー゚*ζ「えっとね、わたしの親友なの。今度紹介するね!」


(,,゚Д゚)「おー、サンキューサンキュ」


       


 


8 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:41:59.60 ID: 9dZxI4QW0

・・ ・・・


時間を忘れるほど遊び呆け、デレはたといようもない幸福感に満たされた。


空が藍いろに染まり、そうしてゆっくり

フェードアウトしていくように暗くなっていくのを見て、しかめッ面をしてしまうほどだった。


(,,゚Д゚)「まあまあ、また遊べばいいじゃんね」


ζ(゚ー゚*ζ「うーん、そうだけど……」


(,,゚Д゚)「そうだって、な、な、決まり決まり! 俺が送ってったげるって!」


たとえこの日が終わろうと、また今度遊べばいい。

デレはそう自分に納得させるのだが、それでも寂しさは心の底でおりのように沈んだ。


その理由の一端は、クーによるものであった。


 


 


 


9 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:44:18.77 ID: 9dZxI4QW0

川 ゚ -゚)「ごめん、今日は難しい」


ギコと交流を持ち始めた頃から、クーはデレの誘いに中々応じなくなった。

理由は教えようとしない。

突飛な言い訳をつけて一人で帰る彼女のその後姿に、デレは虚しさを覚えてしまうものであった。


ギコと付き合っている最中でも、ふいにクーの顔がよぎり、心が痛んだ。


(,,゚Д゚)「どうかした??」


気遣う言葉に、デレは首を振りながら


ζ(゚ー゚*ζ「ううん、なんでもない」


そう返答するばかりだった。……


 


月日は経ち、梅雨は明けた。


        


 


10 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:48:17.61 ID: 9dZxI4QW0

一九九五年、七月二十九日。この頃のN市は、気だるい活気に充ちた。


陽光が照りつける。

清々しい蒼穹には、地平線に架かる積乱雲が似つかわしい。


街は見渡す限り乱反射し、一条の影さえ見当たらない。

あまりに眩しく、視界が遮られるばかりか、瞼の裏が圧迫されたように痛むので、デレも愚痴るよりなかった。


目を細めながら、舗道の上を歩くのだが、サンダルの裏がいやに粘つく気配がする。

この暑さで、アスファルトが融けてしまったのかしらん――

もはや馬鹿々々しいと考える気力さえ、湧き上がってこない。


ζ(゚ー゚;;ζ「あづい……」


随分まえから、腕時計の辺りにデレは違和感を感じていた。

汗を流しすぎたせいか、時計の革が変色してしまっている。

嫌々取り外すと、汗の雫が時計を嵌めていた箇所で生まれていたが、

いくらか震えたのち、アスファルトの上に落下していった。


ボストンバッグに時計を放り込む。

装着するのは店内からにしよう、デレはそう決め込んだ。


 


12 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:52:12.03 ID: 9dZxI4QW0

アスファルトから熱気が立ちのぼる。

ほんの拍子に転んでしまえば、たちまち火傷してしまうのでは……と、危ぶまれるほどであった。


こうも陽光が強烈だと、日焼け止めがまともに効いているのか不安になってしまう。

圧倒的な日差しを前に、微量の琥珀色の粘液で立ち向かうこと自体、浅ましいことなのだろう。


パイルパーカーにタンクトップという出で立ちに、後悔し始めてきた。

既にタンクトップは汗をふんだんに吸い込んでしまっている。

この暑さだし、パーカーなど脱いでやりたいのだが、上がタンクトップだけというのは心許ない。

元々の恥ずかしがり屋な性分が、その格好を認めようとしない。

そもそも水着もロク着れないほどだし、生足だって軽々と見せたがらない。


どうせ誰も気に留めないだろう、ええい脱いでしまえ。と振り切ろうとしたのに、

パーカーのファスナーを上げてしまうという、そんな体たらくであった。


もう、どれほど歩いただろうか。

かれこれ一時間は経過したように感じられるが、実際は二十分をようやく越えた辺りに違いない。

通常の三倍の時間の密度……といっても、決して嬉しいものでもないのだが。


ζ(゚ー゚;;ζ「ふぅ……」


蒸留するとアルコール分が約三倍になるという話は有名だが、

ちょうどそのような感じだろう、とデレは脳裏で考えを膨らませた。


                             


 


14 名前: 訂正 ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:56:13.22 ID: 9dZxI4QW0

アスファルトから熱気が立ちのぼる。

ほんの拍子に転んでしまえば、たちまち火傷してしまうのでは……と、危ぶまれるほどであった。


こうも陽光が強烈だと、日焼け止めがまともに効いているのか不安になってしまう。

圧倒的な日差しを前に、微量の琥珀色の粘液で立ち向かうこと自体、浅ましいことなのだろう。


パイルパーカーにタンクトップという出で立ちに、後悔し始めてきた。

既にタンクトップは汗をふんだんに吸い込んでしまっている。

この暑さだし、パーカーなど脱いでやりたいのだが、上がタンクトップだけというのは心許ない。

元々の恥ずかしがり屋な性分が、その格好を拒絶しているのだ。

そもそも水着もロク着れないほどだし、生足だって軽々と見せたがらない。


どうせ誰も気に留めないだろう、ええい脱いでしまえ。と振り切ろうとしたのに、

パーカーのファスナーを上げてしまうという、そんな体たらくであった。


もう、どれほど歩いただろうか。

かれこれ一時間は経過したように感じられるが、実際は二十分をようやく越えた辺りだろう。

通常の三倍の時間の密度……とはいっても、決して嬉しいものでもないのだが。


ζ(゚ー゚;;ζ「ふぅ……」


蒸留するとアルコール分が約三倍になるという話は有名だが、

ちょうどそのような感じだろう、とデレは脳裏で考えを膨らませた。


 


 


15 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 22:57:19.81 ID: 9dZxI4QW0

ウォッシュはローワインに変化し、さらに蒸留させればスピリッツへと変貌する。

醸造酒が一つの文化に移り変わる麗しい作業なのだと、デレは父親の内藤によく聞かされたものであった。


いままさに蒸留させられている自分は何に変わるのか――呆れつつもデレは

自問自答してみるが、当然答えは返ってくるはずもない。


だが、自分が何か、今までとは違っていることは、随分前から自覚していた。


"ホワイト・ラブ"へ足を向けるこのひとときの間で自分は変わってしまうのか。

思わず苦笑が漏れてしまう。

いっそシンデレラのように、神々しく輝いてくれないかな。


首筋の滴をハンカチで拭き取っているうちに、目的地の看板が目に入った。


あの店であの人と待ち合わせするのは、今日が初めてだった。


なにか、特別な時間が起きそうな予感がする。


デレは一息ついてから、焼杉造りのドアを押し開けた。


 


16 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:00:35.53 ID: 9dZxI4QW0

たちまち、火照った肌を冷房による空気が冷ましていき、

強すぎず、弱すぎない珈琲の香りが、ほどよく鼻腔を刺激した。

光の量の多すぎた外とは違う、仄暗い店内は目を休めるのに最適である。

五感が混乱するような変化であり、

とつじょワンダランドに誘い込まれたような、気分のいい錯覚をデレは味わった。


一歩々々すすむ度に、嘆声したくなるほどの涼しさが訪れる。


ζ(゚ー゚*ζ「あっ」


さっそく待ち合わせの相手を発見した。

足を速め、目的の席に向かう。


白い円卓の上に白薔薇を一本さした、風変わりながらも高貴な趣き

を持つその席は、窓べりに位置し、フランス窓から差し込む陽光がちょうど良い具合に水差しを照らしていた。


デレが待たせた相手は、文庫本を読みつつ片手を上げる。

足を組んでい、なまめかしい白い肌が光沢を放っているのが見て取れた。

その象牙色の脚に相応しい、雪色のワンピースを着ている"彼女"は、零れるような笑顔になった。


同性のデレですら心臓が跳ね上がりそうになるのだから、男からしてみれば

卒倒ものの光景ではないだろうか。


 


18 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:03:56.28 ID: 9dZxI4QW0

川 ゚ー゚)「やあ、待ちくたびれたよ」


デレが席に着くのと同時に口を尖らすと、笑窪を作りながら、


川 ゚ー゚)「このままどうなるのかと不安になったよ」


ζ(゚ー゚*ζ「ごめんごめん! でもクーちゃんってほんと大げさだねっ」


川 ゚ー゚)「いやいや、野垂れ死ぬかと思ったさ」


プッと吹き出すのを堪えながら、デレはシッカリした口調で、


ζ(゚ー゚*ζ「喫茶店で野垂れ死なないでよォ」


川 ゚ー゚)「あー、さみしかった」


組んでいた足を放り出すように解くと、己の髪を手櫛しながらボヤいた。


駄々ッ子のようなクーは、最近では珍しい。

よほど機嫌がいいのだろう。ホッソリした白い指は、さきほどから忙しない。


 




21 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:12:40.32 ID: 9dZxI4QW0

その忙しない指は、ふと、思い出したように動きを止めた。


川 ゚ -゚)「そうだ」


円卓の中央の白い薔薇を摘み上げると、デレの髪に

かんざしめいた要領で優しく茎を突き刺したのだった。


造花ではないらしい。そのかすかな衝撃で今まで孕んでいたものが

解き放たれたのか、香気がいきなり立ち込めてくる。


戸惑うデレに、クーはさながら白馬の王子らしい顔つきになって、


川 ゚ -゚)「とても……よく似合っている」


ずけずけと言ってから、デレの癖ッ毛を丁寧に撫ではじめる。


ζ(゚ー゚*ζ「え、え」


クーの感情の変化に、ここまで驚かされたことはない……デレのそういった

感想は喜ばしさより先立ってしまう。


だが、徐々に安堵に似た喜びが押し寄せてくる。


 


24 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:16:34.80 ID: 9dZxI4QW0

川 ゚ -゚)「……あ、いやマズかった?」


ζ(゚ー゚*ζ「あ、そんなことない! ほんと嬉しいよ。ほんと」


嬉しそうに小首を傾げて、キョトンとしながら、


ζ(゚ー゚*ζ「うん、だけど、急にどうしたの?」


川 ゚ -゚)「えっ?」


ζ(゚ー゚*ζ「だって、今日はただの遊ぶ日じゃない」


川 ゚ -゚)「ああ……」


木製の椅子をギィギィ鳴らし、ふてぶてしいような顔になって、


川 ゚ -゚)「久しぶりじゃない。二人だけで会うのって」


ζ(゚ー゚*ζ「あ、、、」


重たげにクーが言いきったそのとき、水を打ったように静まり返った。

BGMのジャズも、頃合よくレコード針が停止した。


 


27 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:18:29.52 ID: 9dZxI4QW0

沈黙のそのひととき、デレとクーは顔を見合わせた。

髪をかきあげるクーの癖、小首をかしげるデレの癖が停止したままの状態で、黙り合った。


さきに口を開いたのはクーだった。

大きく腕を組みながら、あどけない口調で、


川 ゚ -゚)「だから嬉しくって、つい。……ね?」


そういってクーが笑みを浮かべると、空気が一瞬にして打ち解けたものへ移り変わった。


ζ(゚ー゚*ζ「ほんとにありがと。すごく、うれしいよ」


川 ゚ -゚)「感謝したいのはこっちの方だ。ほんとに」


クーは姿勢を崩して頬杖をつくと、いたずらっぽい目つきになって、


川 ゚ -゚)「ところで、お願いがあるんだが」


ζ(゚ー゚*ζ「え、なァに?」


川 ゚ -゚)「予定を取りやめにして、今日いちにちここで過ごさないか?」


弱々しく微笑んでいうと、視線を下に落とした。


 


31 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:22:52.45 ID: 9dZxI4QW0

本来では、ここで待ち合わせたのちに、電車に乗り込んで

水族館だの美術館だのに行こうと取り決めていたが、主催であるクー自身、行く気がしない

というのでは、デレも同意せざるをえなかった。


デレは小さく頷くと、飲み物の注文をした。

正直いってデレも、この暑さのせいかバイタリティが削げてしまっていた。


ここで本を読んだり、クラブサンドでも頬張って

クーとゆんたくするほうが、遥かに満喫できるだろう。……


こうして二人の少女は読書をして、貴重な一日を過ごそうと取り決めた。

デレは、クーから渡された文庫本の小説を一ページ目から丹念に読み始める。


フランツ・カフカ「変身」……奇妙な出だしから始まる、現実的なのか

非現実的なのか判然つかないストーリーは、見事にデレの常識を混乱させた。


クーの説明によれば、たいそう有名な作品らしいが、読み進めても読み進めても混乱が収まらないし、

そもそもデレにとって惹かれる作風ではないので、途中で読むのを放り出そうと考えたのだけれども、

ページをめくる手が一向に止まらないのは何事だろう。


浮遊感のさなかで発せられるグレーゴル・ザムザの悲痛が、デレの胸をいちいち突き刺す。

彼の思いとは裏腹に"変身"していく家族達は、酷いと思いつつも嫌いになりきれない心を持っていた。


八方美人なデレにとって、心が不安定になってしまうようなキャラクターばかりであった。


 


32 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:24:34.89 ID: 9dZxI4QW0

物語を読み終えた。短編小説だったし、ラストにかけては

貪るように読んでいたので、一時間と少ししか経っていなかった。


川 ゚ -゚)「どうだった」


半ば放心気味のデレに、やさしく問いかけた。


ζ(゚ー゚*ζ「えっと……」


小首をかしげながら、デレはあどけない口調になって、


ζ(゚ー゚*ζ「主人公がかわいそ過ぎるなぁって……」


川 ゚ー゚)「あぁ……」


読んでいた自分の小説にしおりを挟みこむと、


川 ゚ー゚)「あの最後の妹のシーンからは、涙なしには読めないな」


ζ(゚ー゚*ζ「ほんとにね……」


読了したばかりの本について語るのは、なんと気持ちのいいことだろう。

デレは読書の楽しみを見出した。


 


36 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:26:16.54 ID: 9dZxI4QW0

読書は時間をたやすく消費させる。

気がつけば、デレはトールサイズのココアを三杯も飲んでしまったし、

クーもハートランドビールを二瓶あおってしまっていた。


デレが「四つの署名」を読み終えた辺りで、クーはそろそろ帰ろうかと提案した。

シャーロック・ホームズがコカインを嗜んでいたというショックから抜け切らぬうちだったからか、

たやすく二つ返事で同意した。


読んでいるうちはストーリーの面白さでその事実を忘れていたけれども、

ラストの一文を読んで、ふたたび冒頭のショックに包まれてしまったのである。


そのことをクーにいうと、彼女は微笑んでから、肩をすくめて、


川 ゚ー゚)「まあ、あれは意外だよね」


ζ(゚ー゚*ζ「意外なんてもんじゃないよー、ほんとイメージと違う。。。」


川 ゚ー゚)「でもまあ、あれはあれでクールじゃないか」


そういって立ち上がって清算に向かうクーを、デレは慌てて追いかけた。……


 


40 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:28:22.57 ID: 9dZxI4QW0

空は薄暗く沈んだ。

夕暮れの鮮やかな光は西に追いやられてしまってい、外灯は暗いままでも、往来は藍色に仄明るい。

しらす雲は地平線に溶けて、涼しい空気を孕んでいるように思われた。


・・ ・・・


ζ(゚ー゚*ζ「ええ、もう帰るのぉ?」


内藤には帰宅が遅くなるかも、と伝えていたし、

せっかく夏休みに入ったのだから、まだまだデレは遊んでいたかった。

しかし、クーは困った顔をしながら、


川 ゚ -゚)「うーん、、、遅すぎると危ないだろう? さいきん物騒じゃないか」


ζ(゚ー゚*ζ「でもまだ七時だよ」


川 ゚ -゚)「そういう半端な時間だからこそ危ないんだよ」


にべもなくいうと、デレの肩に手を乗せながら、


川 ゚ー゚)「送ってってあげるから」


 


41 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:31:09.61 ID: 9dZxI4QW0

その帰り道、デレは不思議な浮遊感に包まれた。

クーの手はすぐにデレの肩から離れたけれども、その感触はいつまでも続いた。


空の藍色が闇色に移ろいでいく下、二人の少女はひた歩いた。

この頃の季節は、風が優しい。


ζ(゚ー゚*ζ「……ねぇ」


川 ゚ー゚)「ん……?」


ζ(゚ー゚*ζ「まるで……わたしたち恋人どうしみたいだね」


躊躇いがちにデレは呟いた。

クーは目を見開いてしばらくデレの顔を見続けたが、そのうちフっと顔を緩ませ、

安堵に充ちた口調で、


川 ゚ー゚)「そう……そうか、そっか」


言い切らぬうちにクーは下を向いてしまった。

長髪が肩からずり落ちて、表情はまるで窺えない。


そんな様子を見つめながら、デレはギコの勇ましい顔立ちを、無骨な声色を思い出した。


恋人……なんと甘美な響きだろう。


 


44 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:32:53.42 ID: 9dZxI4QW0

デレも思わずそっぽを向いてしまう。


こうして二人は、お互いを見つめることもなく、

また、真っ直ぐ前を見ながら歩み進まなくなったのだった。……


デレの自宅にそろそろ近づいた。

ようやく表情もまともになり、別れの緊張感がふつふつと表立ってくる。


四角錘のようなその建物の前に来ると、二人は足を止めた。

クーはデレの白薔薇かんざしの位置を正してから、寂しそうに、


川 ゚ -゚)「じゃあ……今日はありがとう」


ζ(゚ー゚*ζ「ううん、こっちこそありがとう」


そう返しながらもデレは、クーの表情に疑問を抱いていた。


そこまで思いつめたような表情をどうして取るのだろう。

はやめに帰ろうと言い出したのは、クーちゃんの方なのに……。


川 ゚ -゚)「うん……」


もう一度デレの髪に手をやって、最後の確認とばかりに白薔薇の花片に触れる。


 


48 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:34:34.87 ID: 9dZxI4QW0

ζ(゚ー゚*ζ「また遊ぼうね、わたし夏休みはヒマだし」


川 ゚ -゚)「わたしもだ、こんどはデレから誘ってよ」


それからとりとめもない会話をなんどか交じわせ、

いよいよクーが帰宅することとなった、そのとき、


川 ゚ -゚)「じゃあ、そろそろ帰るね」


クーがそう言いながら、背を向けだしたので、デレも、


ζ(゚ー゚*ζノシ「うん! じゃーねー! また遊ぼ!」


と送ってから、正門のベルの方へ詰め寄った。


ピン、ポーン


軽快なチャイムを鳴らしてから、デレは立ち止まった。


 


50 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:36:07.42 ID: 9dZxI4QW0

家族が玄関を開けてくれるまでの間のそのとき、

デレの背後に、何かが近寄ってくる気配がした。


ζ(゚ー゚*ζ「……!?」


慌てて振り返った。

もし強盗だったらどうしよう、と肝を冷やしながら。


しかし、その近づいてきた人間は強盗などではなかった。


川 ゚ -゚)「デレ……」


ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの、わすれも――」


クーだった。帰ろうと背を向けていたはずのクーであった。

人形めいた無表情でデレに接近すると、そのままデレの肩を掴むと、


クーは、やおら唇に己の唇を押し付けた。


 


 


54 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:38:26.34 ID: 9dZxI4QW0

ζ(゚ー゚*ζ「……!」


それはあまりに軽やかな動作で、近づかれてもまったく不安にさせない。

朱色の唇と唇とが甘く触れ合ったときでさえ、

デレは、それが異常な事柄と思いもしなかった。


柔らかい唇が柔らかい唇の感触を確かめる。

不思議で、心地良い味わいだった。


その色に似た、たしかな熱っぽさが唇を通してデレの全身に行き渡る。

しかし、かすかに感じられる

暗い執拗な絡みとるような息吹は、どこから来るのだろう。


弾みで白薔薇は髪から抜け、軽やかに地面へ落ちてしまった。

デレがその方へ目を向けるときでさえ、クーの接吻は、徐々に激しさを増していった。


その力強さに、デレは惚れこんでしまったのか、

視線を真正面のクーへ向けると、優しく目を閉じた。


 


57 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:40:06.22 ID: 9dZxI4QW0


そうした間に、クーはデレの背へと長い腕を回した。

クーの冷ややかな腕の感触が、服越しに伝わってくる。


デレは事態を飲みきれていず、ただ、「家族からこの光景を見られたらやだなぁ」だのと

呑気に考えるばかりで、もとより抵抗も見せない。


何拍ほどか経った。

その隙にクーは素早くデレのバッグに何かを忍ばせると、

デレを離し、にこりと笑ってから無言で再び引き返した。


ζ(゚ー゚;ζ「……え……」


クーの後姿を見て、ようやくデレは異様だったそのひと時に戸惑った。


ζ(゚ー゚;ζ「クーちゃ……待っ……」


しかし、声をかけてもクーは振り返らないばかりか、駆け足で立ち去ってしまい、

たちまち宵闇に溶け込んでいった。……


 


60 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:42:05.50 ID: 9dZxI4QW0

浮遊感は虚無に似た。


覚束ない足取りでデレは帰宅した。


ζ(゚ー゚;ζ「ただいま……」


玄関は暖色ライトで照らされているが、人の気配はまったくしない。

リビングの方から、バラエティ番組の喧騒と内藤の笑い声が聞こえている。


ζ(゚ー゚;ζ「(……父さんにはバレてない……)」


わずかばかりホっとした。

もし父親に事の顛末を目撃されていたら、

説明にどれほど時間を食うのか、想像もつかない。


いそいそと自分の部屋へと、デレは階段を上った。

手擦りに掴まりながらのぼっているうち、踊り場に誰かが立っていることに気がついた。


ζ(゚ー゚;ζ「ペニサス……」


 


62 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:43:05.66 ID: 9dZxI4QW0

('、`*川「バカじゃないの」


冷ややかに姉を見下ろしながら、階段を下りていった。


('、`*川「ブスのクセに、さぁ」


擦れ違いざまにそう罵ると、そのまま一階に足をつけて、

リビングへと去っていってしまった。


ζ( ー *ζ「………」


たちまち、浮遊感は失せた。

腹の底から鈍痛が押し寄せてき、足取りさえ重くなる。


二階の自分の部屋に辿り着くまで、常態の何倍ほども時間がかかった。

そのままベッドに倒れこむと、気絶したように眠りこくる。


自分のハンドバッグに見慣れないハンカチが納まっていることに

気がついたのは、翌日の部屋の掃除のときであった。……


・・ ・・・


 


65 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:44:42.43 ID: 9dZxI4QW0

(,,゚Д゚)「ふぅーん、変わってんな」


ギコはそういうと、顎でしゃくってデレを促した。

デレの足元の座布団に腰かけろ、という意味であろう。

言うとおりにデレは正座すると、ギコは満足したように唸って、


(,,゚Д゚)「そのクーって娘、レズなんかじゃねえのか?」


ζ(゚ー゚;ζ「えぇ~!?」


慌てふためくデレに、ギコは調子づいたような勢いで、


(,,゚Д゚)「だってありえねぇだろ! 帰り際にキスってアメリカ人かっつうの!」


ζ(゚ー゚;ζ「ぅう~ん」


デレも反論する気になれない。

クーを笑い話の種にしたり、ギコと口論する気がないのはもとより、

この部屋の蒸し暑さに辟易した、というのが大部分の理由である。


(,,゚Д゚)「ああ、暑い? 悪ィな、エアコンついてねんだわ。窓、あけっからよ」


……一九九五年、八月三日。猛暑も全盛を極めるこの頃。


 


66 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:46:24.88 ID: 9dZxI4QW0

うら若き二人は、片割れの男の部屋で言葉少なとなっていた。


ζ(゚ー゚;ζ「あぁありがとう。ちょっと、暑いの苦手で……」


華やかな黄のパーカーを脱いで、楽な軽装になったデレはそう感謝すると、

首回りの汗を手で拭いながら、


ζ(゚ー゚;ζ「ギコくんは暑いの平気なの?」


(,,゚Д゚)「ん? ああ……」


財布を探っていたギコは生返事すると、デレに目を合わせて、


(,,゚Д゚)「エアコンない部屋で寝たり起きたりしてっからな」


ζ(゚ー゚;ζ「そっか……」


(,,゚Д゚)「まあ窓は北側だから太陽が来ないんだわwそれがちょっとだけマシかw」


ζ(゚ー゚*ζ「じゃあコレ北枕じゃないw」


ベッドのほうに目をうつしたデレが、かろやかに笑ってみせた。


 


70 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:47:41.31 ID: 9dZxI4QW0

(,,゚Д゚)「ああ、そうだな」


とたんに低くなった男の声を聞き、デレは、いま目の前にある

このベッドがどういったものかということを悟ってしまった。


……ベッド……。


空はクーと別れた頃とまったく同じ色をしてい、その宵闇は、なんらかの予兆を感じさせた。

さりげなく腰をベッドの上に移したギコも、予感を悟っているに違いない。


父には「友達の家に遊びに行く」とだけ伝えてある。

”泊まるかもしれない”とは一言たりとも教えていない。

デレの臆病心の表れである。


しかしこの状況では、いずれ父に連絡をせねばならないような気がする。

事実、ギコの瞳の若々しい獣のような輝きは、ときおりデレをきつく締め付けるのであった。


 


 


73 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:48:44.97 ID: 9dZxI4QW0

デレはこのとき訪れた沈黙の間、ひたすらこんなことを考え続けた。


……ああ、デートの帰りのこの誘い、乗ってしまわなかったらどんなに気楽だったことか。


……でも、その気楽さは、幾度となく味わってきたじゃない。


……たまの冒険心だって、発揮させたって……いいじゃない。


……ねェ?


(,,゚Д゚)「……そんな緊張すんなよ」


ζ(゚ー゚;ζ「エッ」


がちがちに身体が固まったデレを見やりながら、ギコはふっと優しい眼になって、


(,,゚Д゚)「おれを信じてくれればいいんだからさ」


ζ(゚ー゚*ζ「……ギコくん」


そのとき、ふたたび訪れたしじまは、たしかにお互いを意識しあった、

まさしく充実したひと時であった。

               


 


77 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:50:13.27 ID: 9dZxI4QW0

窓の向こう側に拡がる宵闇は、まもなく本格的な夜になろうとし、

薄ら暗い眺めも、その中で舞い回るすじ雲も、やがては見えなくなるだろう。


「今日は親が帰ってこん」というギコの言葉は、この沈黙の中で、とつぜん輝いてみせる。

蝉しぐれも、いまでは気を駆り立てさえしない。


ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ギコくん……」


(,,゚Д゚)「ン?」


ζ(゚ー゚*ζ「隣に座っていいかなぁ」


返事を待たずに腰を浮かせたデレを、ギコは笑顔で受け入れた。

女は男のすぐ傍に腰掛けた。寝台のスプリングが、窮屈そうに軋んだ。


俯いてはにかむデレをギコは横目で見やりながら、そっと肩へ腕を回した。

シャツ越しに伝わる彼女の体温は、母のように安らかであった。


ぐっと力を込めてギコは己の肩に彼女を寄らせた。

抵抗なく凭れこんだデレの頭は、すっかりギコの胸におさまる。


 


80 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:52:00.75 ID: 9dZxI4QW0

しばらくその状態が続いた。

情合した身体の寄せ合いは、デレを安心させるばかりか、性さえ解き放った。


ギコの厚い胸板は心臓の脈打ちで時折たかく篩え、それがまた、

胎内に居るような錯覚さえ味わわせる。


女をたやすく抱き寄せた男の身体は、ゆるい動作でベッドに横たわった。

半ば意識がまどろんできたデレは、スプリングの音で己の状態

を知ったが、まるで抵抗も見せないばかりか、せがむように軽く悶えた。


ζ(゚ー゚*ζ「あったかい……」


(,,゚Д゚)「そう」


ζ(- -*ζ「ウン……」


デレの背中を擦っていたギコは、突然デレを抱えて半身を起こした。

戸惑うデレへ強引に接吻をすると、またもデレを抱擁し、

今度は覆いかぶさるようにうつ伏せ気味に倒れこんだ。


(,,゚Д゚)「もっと、、、あったかくしてやる」


吐息交じりに強く言うと、着衣のままのデレに激しく求愛した。


 


83 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:53:41.45 ID: 9dZxI4QW0

躊躇わない。

若い、情熱的な男と女との前では、脱衣の手間すらもどかしい。

たちまち汗でシャツが蒸れるが、それすら二人の前では官能の象徴であった。


デレが受け身になってギコにしがみ付いていたときに、彼は行動を起こしたらしく、

いつの間にか部屋は消灯されていた。


三日月や一等星の輝きこそが、密室を灯す光となった。


やがて二人は一旦落ち着くと、服を脱がせ合いにかかった。

緊張と疲れとでドッと発汗したデレのシャツは、まるで身体から離れず、四苦八苦してしまう。


ようやく裸体になりあったそのとき、デレの瞳が三日月を捉えた。

観察されているようで、背徳感がデレの脊髄を駆け上ってくる。


やがてはその月でさえ、ギコの身体が迫ったために見えなくなってしまう。


裸と裸との抱きしめの素晴らしい感触に、デレは鳥肌の立つ思いであった。


抱き締め合うという行為は、続けているうちに肌身を寄せ合いたくなってしまう。

上着が邪魔で、下着こそがじれったい。

肌と肌との擦りあいを求めていってしまうものだが、いま、二人はそれを成し遂げたのであった。


 


84 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/05/14(水) 23:55:13.69 ID: 9dZxI4QW0

嗚呼……幸せ。

ほんとうに……。


ζ(- -*ζ「………」


こうしていつまでも、発情していたい。戯れていたい。

愛されたい、愛したい。尽くしたい。尽くされたい。

彼の全てを求めたい。私の全てを求められたい。

至るところを貪られたい。貪り返してみたい。

幸せになりたい、幸せにさせてみたい……。

これ以外の、全てを忘れてみたい。

忘れさせてみたい……。


世界が融解していくような感覚の中、突き上げられながら、

いつまでも、いつまでもこうしていたい……


デレは神秘の夜の果てまで、そう願ってい続けた。


後掃除も、眠ることも、朝を迎えることも、頭の中にはない。


そんな余裕は、全て性欲で充ちた。


                        (過剰の美学/または神秘の夜の果てへ 終)


 


 


 
 
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