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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
完結おめでとうございます。
08/03

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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです2 

11 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:16:32.53 ID: JAO+O/oE0

2.挨拶風景(第一章)


内藤ホライゾンは六十を迎えた現在では、肝臓が弱っており、アルコールを強く嗜むことが出来ない。

若い頃は酒豪でならしただけあって、酒はしたたかに所有しているのだが、

この有様では「酒も可哀想だ」とのことで、自らの六十周年パーティーに、殆どを無償で放出することにしたのだった。


そのため、マジシャンの前座も終わり会場の明かりが点いた今では、多くの客が上等な酒を味わっていた。

食前ということもあり、大体はカクテルやウイスキーが好まれたが、

食後の秘蔵のコニャックを待ち侘びている人間も大勢居た。

だが、肝心の主役がレッドアイを片手にしているので、慌ててそれを頼む者も少なくなかった。


ホテルのパーティー・ルームが会場なだけあって設備やクオリティは安定しており、

主催者も心置きなくパーティーを楽しめた。


主役である内藤ホライゾンは、会場の隅の円卓に、鷹揚な様子でついていたのだが、

場全体が立食パーティーめいた雰囲気になってきた辺りで、秘書と共に席を立った。


その瞬間、パーティーの参加者は一斉にそちらを向き、遠くの者は会釈をし、

近くの者はぞくぞくと内藤に近寄って来た。


 



12 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:19:20.69 ID: JAO+O/oE0

( ・∀・)「内藤さん、誕生日おめでとうございます」


初老の男が頭を何度も下げつつ歩みよった。

内藤と同じく、レッドアイを片手にしているこの男は

先程のマジシャンショウの責任者である。

エンターテイメント事務所の所長の肩書きを持ち、内藤とは、古くからの付き合いであった。


( ^ω^)「どうも、ありがとうございますお」


互いに会釈し合うと、事務所所長のモララーは、早速といった風に、


( ・∀・)「ところで、如何でしたでしょうか先程の出だしは……」


( ^ω^)「勿論楽しませていただきましたお」


( ・∀・)「それはよかったです……何分、途中やり過ぎたかとハラハラしまして……」


モララーは本心から安堵した様子で、「フウ」と息をつくと、


( ・∀・)「内藤さんの誕生日ですし、例のプログラムもある以上……」


 


14 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:21:23.98 ID: JAO+O/oE0

( ^ω^)「いやいや! 盛り上がりは大切ですし、例のは例ので大丈夫ですお」


( ・∀・)「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」


繰り返しお辞儀をし、モララーの手のレッドアイが弾みで零れそうになる。

それからモララーは懐から一枚の名刺を取り出すと、グラスを脇のテーブルに置いてから、

大仰な身振りで、


( ・∀・)「では、こちらがさきほどの娘でございます……どうぞ、お見知りおきを」


内藤にそれを渡した。

頷いてから、内藤はその、名前の部分だけを、素早く読み通した。


          ハインリッヒ高岡 (27)


大人じみた風情を持ちつつも、どこか少女のような雰囲気も携えていた娘だった。

意思の強そうな瞳や、長い睫毛からはカリスマめいたものを思わせ、身体全体からハリとした魅力を感じさせた。

内藤はハインリッヒという娘を気に入っていた。

単なる老人の妄想かもしれないが、なにやら自分に対する熱意のようなものを感じさせたからである。


内藤はグラスを持ったままで胸ポケットに名刺をしまい込むと、モララーに了解の仕草をした。


 


16 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:24:06.55 ID: JAO+O/oE0

そのとき、内藤の後ろで「わぁっ」という子供の歓声が沸いた。

振り返ってみると、ハインリッヒが少女に、風船で形作られた仔犬を渡しているところだった。

少女の零れそうな笑顔と、それを見守るハインリッヒの嫣然と微笑む姿が印象的だった。

風船を貰った少女のほかにも、少年少女は沢山集まって、せがみながらハインリッヒの周りを取り囲んでいる。


ハインリッヒは慌てながらも、優しく子供達を宥めながら風船を作り続けていた。

シャンデリアの光に照らされた彼女の顔には、一筋の汗が煌めいて見え、色気を感じさせる。

舞台の上での、一歩間違えれば殺気にも捉えてしまいそうなほどのオーラは、スッカリ鳴りを潜めていた。

まるで別人であり、その変貌ぶりには感嘆するしかなかった。


眺めているうちに、続々と子供達が増えてハインリッヒを取り囲んでいった。

ハインリッヒは困ったような、はにかんだ笑顔をしながら仕事仲間に手伝いを冗談めいた口調で頼み、周囲を笑わせた。

仕事仲間がバルーンアートの手伝いに勤しむも、一向に子供がハインから離れる気配はない。


そもそもハインリッヒ自体に懐いてしまっているらしく、バルーンを貰っても全く動こうとはしない。

中には抱っこをせがむ子も数名居り、バルーンと合わせて、ハインリッヒは"やんちゃ"な仕事に追われる羽目となった。


笑顔でその光景を見つめていた内藤は、ふと物寂しさに襲われた。

無邪気な子供や、ハインの殊勝な立ち振舞いに、娘の面影を見てしまったのである。


内藤の愛する、デレという心優しい娘の面影を。


 


18 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: >>17 追々あると思うw 投稿日: 2008/03/19(水) 22:25:58.12 ID: JAO+O/oE0

( ^ω^)「………」


今日、デレを見ることが出来るのだろうか。

そう考えるだけで、鼓動が若干早くなるのを感じる。

内藤はしばらくハインリッヒと彼女を取り囲む光景を眺めていたが、ふいにモララーから声を掛けられ、現実に引き戻された。


( ・∀・)「彼女はとても熱心で、それで気配りも忘れない人でして……」


( ^ω^)「とても優しそうな人ですお」


( ・∀・)「はい、大変優しく、それだけでなく勿論技術の方も……」


モララーの言葉は、それ以上聞こえなかった。

内藤は再び、今は居ない娘について、思いを馳せていたからである。


同時に、積年の疑問までもが押し寄せてくる。


デレよ。なぜ私を置いていった?

お前は今、どこに居る? 今まで、どこに行っていた?

十五年前の秋、スカーフを一つ残して忽然と消えてしまったお前。


そしてお前とは、今日会えるのかい?


 


20 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:28:24.86 ID: JAO+O/oE0

最悪の可能性だけは、常に目を瞑ってきた。

今日も、昨日も、十五年前からそうだった。


娘の失踪の裏で急成長を遂げている自分の会社に、虚無感めいたものを内藤は抱いていた。

己の悲壮を尻目に利潤を上げているという事実は、どこか、神からの言い訳みたものを感じさせたのである。


「ヨカッタじゃないか。娘が居なくとも、これで満足できるだろう?」


そういう文句が、今にも後ろから囁かれるようであった。


しかし、内藤はその妥協を潔しとせず、娘を捜索し続けた。

だが、結果は芳しくなく、失意だけが積もっていった。

あざ笑うように成長する「内藤物産」に、自らの会社だというのに、怒りのようなものさえ覚えたのであった。


会社の利潤を認めたら、その瞬間自分は、娘の失踪を受け入れてしまいそうだ。

内藤は常にそう考えていた。いっそ会社さえ潰せば自分の元に娘が戻るのかもしれないとすら考えた。

だが、社員を路頭に迷わせる羽目になり、そもそも、自らの資産が増えれば、娘を探す手段が増えると思うと、

とても会社の成長を止めるつもりにはなれなかった。


歯がゆいジレンマを過ごしているうちに、酒が喉を通らなくなった。だが、今更アルコールの未練など無かった。

そろそろ、デレも三十の年を迎えた頃か……。もしかしたら、もう、私の孫が居るのかもしれない。

内藤は娘の「死んだ可能性」を決して考えず、ズットいき続けた。


そうして過ごしていたある日、一つの朗報が舞い込んできたのであった。


 


22 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:30:07.82 ID: JAO+O/oE0

世界的な霊能力者、「クー・ルー」がデレの行方を霊視してくれるというのだ。

勿論、霊視というのは生者にも適応され、実際、成果を上げることもままあるという。

テレビでも顔を出さない、謎に包まれた人物であり、内藤は常々この人に霊視を頼みたいと願っていた。

そうしたところ、取引先のモナー氏が取り付けてくれたのであった。


だが、彼は確かに"つて"を持っていたのだが、クー・ルーは多忙のため、内藤の願う日付に取り合わせられなかった。

ようやく取れた予約の日は、内藤の誕生日パーティーと同日であった。……


内藤は思いを振り切るようにかぶりを振ると、いつもの取引行儀でモララーと会話をした。

モララーの愛想に隠れた要求をのらりくらりとかわし、手際よく話を終わらせてから、

自社の社員の愛想の渦に突入する。


クラッカーかと勘違いするほどの拍手に驚きつつも、一人々々に握手していく。

中には名を知らぬ社員も居たが、気にせず歓迎されることにする。


内藤が社員の輪に囲まれている頃では、場全体の雰囲気もスッカリ団欒めいたものとなった。

アペリティフ片手に談話する紳士淑女、それにハインリッヒに群がる少年少女、それぞれが楽しみ、時は過ぎていった。


   


 


23 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:32:23.07 ID: JAO+O/oE0

トレンチを片手に、ボーイ達は優雅に会場を歩いていたり、または立ち止まっていた。

サイズが割かし大きな黒盆には飲み終えたグラスを乗せて、

サイズが小さめの銀盆には酒の注がれたグラスを乗せているらしかった。


しばらく、団欒の空気は続いた。


七時になれば、皆はテーブルについて、食事を待つことになる。

だが、それまでの間はこうした酒を味わう時間のままだろう。


社員の輪を抜けた内藤は、ボーイにレッドアイの御代わりを貰ってから、再び歩き出した。

進みながら内藤は、まるで自分がアリ地獄になったかのような感覚をおぼえる。

近くの人間が吸い寄せられるように自分の元に集まり、揉み手をするというのは、見ようによっては滑稽である。


勿論、そんな感情はおくびにも出さずに内藤は次々と握手していった。

掛けられる言葉も殆どがテンプレートのようなもので、真新しい感情というものは涌いてこなかった。


「内藤さん!」


近くに居た男が、バリトン調の声をかけた。


( ^ω^)「これは! 先日はどうも……」


( ´∀`)「いえいえ、誕生日おめでとうございます!」


クー・ルーとのアポを取り付けた、モナーであった。


 


25 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: >>24 おっとこれ以上は 投稿日: 2008/03/19(水) 22:35:18.89 ID: JAO+O/oE0

モナーは悠然と内藤に近づくと、力強く握手を交わした。

フロック姿のモナーは片手にカウボーイのグラスを持っており、どうやら既に何杯も飲んだのか、

仄かに頬に赤みが差し、吐息はウイスキー特有の匂いを含んでいた。


( ^ω^)「いやあ、来てくれてありがとうございますお!」


内藤はそう言いながら、秘書に軽く目配せをした。

さっと頷いた秘書は、ハンドバッグから白絹に包まれたモノを取り出すと、内藤に手渡した。


( ^ω^)「ところで、例のはこれでいいんですかお……?」


一頻りの恒例的な挨拶が済むと、レッドアイを秘書に持たせてから、絹の包みを解いて中のものをモナーに見せた。

それは、薔薇の刺繍が施されたハンカチであった。


薔薇は雪のような純白色をし、どうやら品種は、フラウ・カール・ドルシュキーのようである。

そして、二十世紀の「開幕」を告げる白薔薇の女王を、薄ピンクのグラジオラスのサークルがグルリと取り囲んでいる。

ハンカチそのものの色までも薄ピンクであり、どこか処女を思わせる風情であった。


( ´∀`)「はい、おそらく……デレさんの念の強い品であれば、とのことですモナ」


( ^ω^)「では、これを……ステージで……」


神妙に頷いてから、内藤はハンカチを秘書に渡し返した。


 


26 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:37:29.59 ID: JAO+O/oE0

突然、モナーは右を向いて手招きを始めた。


すると、間もなくして、鮮やかなドレスに身を包んだ淑女が近づいて来た。

皺一つ無い艶やかな肌をしたその女は、スカートの裾をつまみあげて恭しくお辞儀した。


(*゚ー゚)「内藤様、誕生日おめでとうございます」


( ^ω^)「ありがとうだお、しぃちゃん!」


長女デレと同級生であったというしぃに、内藤は朗笑と共に言葉をかける。

血色のよい顔色で、おそらくリキュールをそこそこに煽ったものと思われるが、

しかし、アルコールの匂いを一切感じさせず、杏に似た香りを持っていた。


そういえば、マジックショウのときの、あの優しい芳香は消えてしまったのかしらん。

内藤はそんなことを考えつつ、モナー父娘と談笑のひと時を楽しんだ。


 


時間は六時四十分となった。


       


 


28 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:40:59.75 ID: JAO+O/oE0

照明の照度が若干落とされ、ムードは僅かに変化した。

光はかすかにオレンジを帯び、ボーイの数も減ってきたようだった。


客人の半数近くは自らの座席につき始め、子供などは既にナイフをフォークを持ち、キンキンと音を立てて遊んでいた。


既に、マジシャンショウの前に乾杯は済ませてあったが、食事が運びこまれる前に

乾杯の仕切り直しをするらしく、新品のグラスが用意されている。


( ´∀`)「まぁー忙しくはないですけどね、ま、その分、ミスだけはないようにしないと……」


( ^ω^)「そうですお、でもだから神経使っちゃって……」


などと言いつつ、二人とも辺りを気にしだした。

そうして、お互いがそう考えていることを知った二人は、サっと返事を言い合うと、各々の席につこうとした。

だが、内藤が足を動かそうとするところを、しぃが突如、呼び止めた。


(*゚ー゚)「内藤さん」


( ^ω^)「ん? 何でしょうかお?」


 


29 名前: ◆tOPTGOuTpU Mail: 投稿日: 2008/03/19(水) 22:42:24.12 ID: JAO+O/oE0

内藤がおどけた風に答えると、しぃは若干伏し目になりつつも、

毅然とした態度を持ちながら、


(*゚ー゚)「すみません。パーティーが終わったら……少し、お話したいことが。どうしても……」


と、今までとは違った物言いで、真剣な意味合いが含まれているのだろう、

それを悟った内藤は、


( ^ω^)「分かったお、しぃちゃん」


丁重な言葉で返した。


・・ ・・・


時間は七時となり、再び照明は落とされた。


                      (挨拶風景 終)


 
 
 
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