長岡速報

 
 
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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
完結おめでとうございます。
08/03

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( ^ω^)ブーンと心母少女のようです 25 

2 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 21:58:18.26 ID:xJz3jwHU0
25.ALL MY TRUE LUV 


・くたびれたギニョールたち

2010年。6月14日。デレの誕生日のその日、内藤は、いまかいまかと宅配を待ち続けていた。
旧内藤宅……デレとペニサスの匂いのするその屋敷に、内藤は5月の中頃から住み込んでいる。


フランス窓から朝日の差し込む、書斎の外の廊下では、男三人が鎮痛な面持ちで語りあっていた。
その面子は流石兄弟と長岡で、囲んでひとつのノートを手にしている。

そのノートというのは、先日、ここ旧内藤宅の一室で発見されたペニサスの心の叫びであった。
居合わせた内藤の部下たちは、こぞって読み漁り、事件の真相を知るや納得とともに戦慄した。

内藤にこのノートを渡し、真実を告げてやりたい。
しかし刺激が強すぎるのではないか、そういう葛藤にとらわれていた。
実子が憎悪や殺意を自分や姉に向けていた、
そんな現実はご老体にはタブーなのではないだろうか。……


( ゚∀゚)「……これを見せるのはよろしくない。部下のおれでさえ、吐き気がするもンだ」

隠蔽側の長岡は、そうピシャリといいのけた。

    



3 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:01:20.02 ID:xJz3jwHU0
( ´_ゝ`)「このノートを見せずして真実を納得してくれるか?」

(´<_` )「そうだ。口頭でペニサス嬢が真犯人でしたといって、十五年の溝は埋まらないだろう」

反対に、公開を薦めるのは流石兄弟だった。
この事件の担当といって差し支えない彼らにとって、結末は透き通ったものでありたかった。

(´<_` )「我々は見せる義務がある、そして内藤様は知る権利があるのだ」

( ゚∀゚)「しかし……こんな結末、許されていいはずがない」

うつむく内藤に、兄者がピシャリと、

( ´_ゝ`)「何が許さない結末だ。充分許される内容ではないか。私の推測したとおりの内容でな」

ペニサスがクーを愛したが故に、引き起こされたこの悲劇は、たしかに兄者の推理通りで、
長岡もそこには感服していたのだが、

( ゚∀゚)「ならいっそこうしよう。もともと我々はこんなノートを発見していなかった、と」

( ´_ゝ`)「証拠をウヤムヤにする気か」

(´<_` )「ふざけるな。これで手当が上がるかもしれんのだ」

流石兄弟は一歩も譲らない。……

・・
・・・



4 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:04:25.38 ID:xJz3jwHU0
「心母少女」……亡きツンが荒巻家の呪いを具現化させたと思われるこの小説は、
少女PがCとDに出会い、やがては破滅に転がっていくという内容だが、
奇妙なことに、登場人物が現実の少女達と符号している。

その事実は内藤も知っており、呪縛の強さというものをひしひしと感じていた。

悪意に満ちた呪縛。          
ペニサス、クー、デレはただ支配されていたギニョールにすぎず、
決して個々が精神を蝕まれていたというわけではない、長岡はそう内藤に告げたかった。

しかし禁断の三角関係が15年前に現れていたというのは紛れもない事実で、
うやむやにすることはもはや不可能であろう。

議論はいつしか、事件の真相のほうへ傾いていった。


( ´_ゝ`)「しかし、この小説内容のことがはたして本当に起きたことなんだろうか」

( ゚∀゚)「そんなことはどうだっていいだろう……」

長岡はじりじりと苦い顔をする。そんな長岡を無視して、弟者はさわやかな表情で、

(´<_` )「兄者が言ったことじゃないか、なんと恐ろしい運命なんだと」

( ´_ゝ`)「いやぁ、あれから考えてみたのだが……」

                


112 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/03(月) 01:20:29.36 ID:/kR/MGSF0
( ´_ゝ`)「もしかすると、荒巻家の呪いなんてものは存在せず、
       この小説こそが、真の呪いなのかも、なんてな」

( ゚∀゚)「はぁ?」

( ´_ゝ`)「つまりだ。全てはツンさんの仕組んだ壮大な劇なのでは、ということだよ。
       ツンさんが作品を書きながら、恐ろしい怨念を込めていったのではないかと」

( ゚∀゚)「バカバカしい」

兄者の想像を鼻で笑うと、

( ゚∀゚)「非現実的な”荒巻の血を持つ女の運命”だが、きちんと荒巻さんも証言しているさ」

( ´_ゝ`)「どう言ったんだ? その荒巻さんは」

( ゚∀゚)「"荒巻家の女は早死にする"。 だったな」

( ´_ゝ`)「早死の呪いは本当かもしれん。ツンさんはそれに託けて劇を立ち上げたとしたら?」

( ゚∀゚)「……どういう意味だ」

はんぶん理解した長岡だが、暗いトーンで聞き返す。

( ´_ゝ`)「″死″を自分の筋書き通りに動かしたんだよ」


7 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:09:02.77 ID:xJz3jwHU0
( ゚∀゚)「根拠は?」

( ´_ゝ`)「ない。ただの空想だ」

嫌味なくらいあどけない顔でそう切り返すと、

( ´_ゝ`)「心母少女の小説の元ネタの過去が、存在するか疑問だったんでな」

議論に参加せず、窓を開けて煙草をくゆらせていた弟者も、振り返りながら、

(´<_` )「まあ突拍子もない内容だしな」


( ゚∀゚)「で、その空想とやらを内藤さまにゃ教えるのか?」

( ´_ゝ`)「いや全然。おれたちはありのままの事実を伝えるだけだ。それが仕事だろう」

( ゚∀゚)「ありのままの事実ねえ……事実が未来につながるとは限らんだろうに」

長岡がぼやくように言うと、吸い終えた弟者が苦笑しつつ、

(´<_` )「少なくとも、収入的な意味で、これでおれたちの未来は繋がるんでな」

・・
・・・
   


8 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:12:16.72 ID:xJz3jwHU0
けっきょく長岡が根折れする形で、結論へと向かった。
内藤にノート……告白文の存在を教え、なおかつその危険性を
充分に伝えた上での引き渡しということで決着した。

内藤は迷いも見せずに告白文を求め、あやふやな結果は求めないことを態度で伝えた。
15年の迷宮から解放されるなら、苦痛などいとわないらしい。

サントリーから何かが宅配され、それを自室に引き込むと、
内藤は告白文をためつすがめつした。……


長岡ら三人は、内藤が扉をしめると同時に、そそくさと帰宅していった。

突然の夕立ちが地面を覆うとも構わない。
ただ、内藤の嗚咽だけは、どうしても聞きたくなかったのだ。


・・
・・・
・・・・

  


9 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:15:29.64 ID:xJz3jwHU0



5月のころに内藤が出した三通の手紙のうち、返信をよこしたのはたったの一通だけであった。
クーはもともとレスポンスをとれる人間ではないと思っていたが、荒巻から来ないのは意外だった。

唯一かえしてくれたしぃは、慎ましい白いろの封筒に、過去の行いを記した紙面を入れてくれた。

茂名建設の一人娘という立ち位置でしか、内藤はしぃのことを認識していなかった。
デレとのクラスメートだったということは知っていたが、どういう親交があったのか、
そういった人間関係の話は本人に″良きクラスメート″としか知らされていない。

手紙の内容は多少はマイルドに描写されていて、そこまでショックを受けるものでもなかった。

最後には「父上と内藤様との関係を知ってからというもの、立場を考えて言い出せませんでした」とあった。


れいの誕生パーティで素振りを見せていたことから察するに、おそらく本当のことだろう。
内藤はいまさら責める気にもなれなかった。

真犯人の闇と長岡が形容した、ペニサスの告白文を手に入れてしまったのだから。

    


10 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:20:34.58 ID:xJz3jwHU0
雨露の屋根を叩くがうっとうしい。いきなり空気も湿り気を帯びたようで、
首の辺りがむずかゆい。さきほどの快晴を忘れたかのように、窓の外の世界は鈍いろで充ちていた。

サントリーからの贈り物をデスクに置くと、内藤は告白文を丁寧に開いていった。

( ^ω^)「………」

    
    『
      私がこれを書いていることは、誰も知りはしないでしょう。
      私がどんな思いでこれを書いているのか、誰もわかってはくれません。

      いいのです。
      私はそれでいい。
      誰かに理解されるとか、まったく望んでいないのだから。

      きっとクーさん……いや、クー様だって、
      私のことは、名前程度しか知らないんでしょう。

      どれだけ気持ちを訴えたくっても、彼女の気迫がそれを許さなかった。
      彼女はそれまでに私の存在を無視していた。
                                      』

孤独感にのまれた、確かな娘の直筆。
光沢をほぼ失ったペンの輝きがよわよわしい。
見たくないという思いに囚われるが、それでも、真実は知らなくてはならない。
      


11 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:25:28.90 ID:xJz3jwHU0
雨露の屋根を叩くがうっとうしい。いきなり空気も湿り気を帯びたようで、
首の辺りがむずかゆい。さきほどの快晴を忘れたかのように、窓の外の世界は鈍いろで充ちていた。

サントリーからの贈り物をデスクに置くと、内藤は告白文を丁寧に開いていった。

( ^ω^)「………」

    
    『
      私がこれを書いていることは、誰も知りはしないでしょう。
      私がどんな思いでこれを書いているのか、誰もわかってはくれません。

      いいのです。
      私はそれでいい。
      誰かに理解されるとか、まったく望んでいないのだから。

      きっとクーさん……いや、クー様だって、
      私のことは、名前程度しか知らないんでしょう。

      どれだけ気持ちを訴えたくっても、彼女の気迫がそれを許さなかった。
      彼女はそれまでに私の存在を無視していた。
                                      』

孤独感にのまれた、確かな娘の直筆。
光沢をほぼ失ったペンの輝きがよわよわしい。
見たくないという思いに囚われるが、それでも、真実は知らなくてはならない。
      


12 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:28:48.87 ID:xJz3jwHU0
頁をめくる指が震える。一文々々を確認するたび、心がすさんでいくのが分かる。
デレの死は予感していた。だが、ペニサスの憎悪は……。
予想外の一撃は、たしかに老体を苦しめた。

ペニサス。
内藤はとめどない苦痛の中で、次女のことをおもった。

なかなかの出で立ちだったが、子供のころは引っ込み思案なところが目立っていた。
中学校へ進学すると同時に活発になっていったが、やはり、どこか表情には陰りがあった。
青色の好きな少女で、一人立ちをいつも望んでいた。

デレのいなくなったあの当時は、嫌われていてもしょうがないと考えていた。
反抗期だろうし、いずれはまた仲良くしてくれると期待していたものだ。
多感な少女に父親は鬱陶しい存在なんだろう、と。

姉との不仲も、いずれは解消してほしいとは願っていたが、自分からは何も行動していなかった。
仕事の忙しい時期だったと言い訳すればそれまでだ。
不安定な女性の心の問題から、逃げていたといえば、……それまでだ。

           


15 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:32:52.29 ID:xJz3jwHU0
デレが失踪してからは、なおさらペニサスのことを蔑ろにしていた気さえする。
絶望と焦りとで、近くの大切な宝物を見捨ててしまっていたのか。

あの秋を境に、家族の歯車は完璧に狂ってしまった。
もとから狂っていたといえばそれまでだが、あの秋以降、ペニサスまでも、
引きこもりがちになっていったのだ。

食卓を一緒にすることも、全くしなくなっていった。
抜け殻のようなペニサスを見て、自分も喪失的な人間に逃げて行った。仕事へと逃げた。

それがいまの、自分の立場なのだ、
革椅子のあの坐り心地は、家庭を見捨てたからこそ味わえたものだったのだ。……


     『
       父のウロタエぶりが笑えてくる。自分では娘のことを分かってたに違いない。
       きっと、「デレはそのうち分かってくれる」とか思ってたんじゃない?
       でも、結果はこんなあり様なんだ。
                                           』

そう、結果はこんなあり様だ。
きっと天国のペニサスからは、権力の亡者と侮蔑されていることだろう。
  


18 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:35:14.83 ID:xJz3jwHU0

(  ω )「ごめんお……」

自分は何ひとつ分かっていやしなかった。
ただオロオロと居もしない娘を捜索し、被害者づらをしていたのだ。

自分は被害者などではなかった。
立派な共犯者とすら言える。
この15年、自分は何をしてきたのだろう。
何もかもが見当違いだった。


( ;ω;)「ばかな大人で……ほんとにごめんお……」



   


20 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:41:13.91 ID:xJz3jwHU0
胸の内を、虚無感と罪悪感が去来する。
視界は涙で滲んだが、不思議と、先ほどより文章が読みやすくなった気がする。
一気に最後まで読破すると、内藤は思わず天を仰いだ。

孤独に疾駆した文章内のペニサスが、あまりにも可哀想だった。
自業自得だとは分かっている。だが、どうあれ娘は苦しんでいたのだ。
そばに居た自分は、それを無視していた。無視したのだ。

知ることも、叱ることも、慰めることも放棄した自分がどうして、娘らを差し置いていま生きているというのだ。



告白文を読み切った。最後の英文は大まかな意味しか訳せなかったが、
いいたいこと、ペニサスの心情というものは、痛烈なくらいに理解できた。



    
……だが、だがしかし。
その邪念は理解できた、そういういきさつがあったのかと、内情を知ることもできた。


そのうえで、娘の気持ちを汲んだ上で、内藤は、娘の気持ちを否定してやりたかった。

  


22 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:45:05.67 ID:xJz3jwHU0
(  ω )「……ペニサス」



――お前は間違っていたぞ、ペニサス。
なにが愛だ、お前の愛とやらは、守られるためだったら
他人を傷つけてもいいのか?
違うだろう、愛というのは、決して人を傷つけるものではない。
結果それですべてがご破算だなんて、ちゃんちゃら可笑しいぞ。
私は一人の人間として思う、けっしてお前は正しくなかった。
圧倒的に間違っている、どうしてそんなことをしてしまったんだ、どうして。。。


恥ずかしいとすら思う。憎いという感情も、先ほどから込みあげてくる。
感情がとめどなく溢れてくる。懺悔も絶望も、いまでは馴染み薄い。憤怒の洪水。


(  ω )「恥知らずだおっ……後先も考えずに、卑怯なことばっか……」


雷光が絶叫した。見るまでもなく、外は闇にぬれている。
相変わらず雨は天窓を強打するし、陰鬱な空気は晴れるどころか次第に重くなっていく。


しかし、そんな状況は内藤にとって、どうでもいいことだった。
いまは現実なんかより、心の中に挑んでいたい。

   


27 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 22:57:43.28 ID:xJz3jwHU0
――そうだ、お前は卑怯だ、とんでもないひきょう者なんだ。
自分からは何も起こさず、人の不幸ばかりを狙って、挙句の自分だけの幸せを
望むだなんて、そんなものが真の愛だの口にするだと? 笑わせるな!

仮にそんな結果になったとして、お前の望むどおりの幸せを迎えたとしてだ、
それからの生活について考えたことがあるのか? 
お前は結局じぶんの行いに耐え切れなくなったろう。しょせんそんなものなんだ。
いずれ罪悪感につぶされ、連れまでもを地獄に叩き落してしまうんだ。
そうして愛はとうに腐るんだ。茶色くよどんで地面に落ちて、お前は最愛の人を、
「こいつさえ居なければ」と考えて憎んでしまうんじゃないのか。

人の不幸を願ったお前に、自分の幸せを望むなんて許されやしない。


苦しかったろう、末期のお前は、そうとうに押し潰されそうだったんだ。
デレだって辛かった。お前より辛かったかもしれない。

そうして、デレも、……相当の大バカ者だった。


――どうしてお前たちは後先考えずに行動するんだ!?
理解できなかったのか、すぐ先の未来が、他人の不幸が。

それを純愛だのと称して、愚かな行動に走って行った。
暖かみを忘れながら、偏執的に他人までも不幸に巻き込んだんだ!


31 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 23:03:02.83 ID:xJz3jwHU0
社会では絶対に通用しないぞ。お前たちは子供だった。
デレ、ペニサス、お前たちは分別もつかない、ただの、ただの……


(# ω )「っばかやろうだお……!」


(#;ω;)「このっこのっ……大バカどもが!!」

ありったけの感情を込めて、ブーンはとつぜんに一喝した。


(#;ω;)「バカだおっバカだおっ……バカ……バカ……」


涙がゆるく頬を伝っていく。やがてそれらはカーペットの上にしたたっていった。
頬のそのくすぐったい感覚も、いまではまったく気にならない。


(#;ω;)「バカ……だお……。ぼくも、ぼくもそうなんだお……!」


やがて感情で喉が潰され、言葉にならない。

ばかでごめん。ばかでごめん。
ブーンは涙もぬぐわず、鶸色のカーペットに膝を打つと、声を押し殺して嗚咽した。



32 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 23:07:59.32 ID:xJz3jwHU0
・・
・・・

それからしばらくの間があった。内藤は立ちあがって、涙でぐしゃぐしゃの
顔を拭うと、傾いだふうに歩きながら、郵便物を手にとった。

ダンボールをあけ、包装紙を破くと、美しいまでの青色がとつぜん視界に入る。

( ^ω^)「青薔薇……」

荒巻を通じ、サントリーフラワーズから送られてきたものだった。
やや紫がかっているが、それでも傍目からはまさしくの蒼をしている。

茎や葉の暗色ぶりや、優雅に反った花片が、いっそうブルーローズの耽美さを強調している。
内藤は先刻までの激情も忘れ、しばらくその奇跡の産物を眺めていたが、
ふと、根本に白色のカードが挟まれていることに気がついた。

手にとって裏返してみると、荒巻の名前が目に入る。

「 ようやく、納得のいくものが出来上がったよ。
  デレちゃんとの約束の品だ、ぜひ二人の墓に供えてほしい。
  ペニサスちゃんが子供の頃から欲しがっていたものなんだ」

そんな、気づかいのみられる文章だった。

  


34 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 23:13:36.70 ID:xJz3jwHU0
( ^ω^)「デレとの約束……」

そういえば、れいの告白文にもデレが荒巻と指きりをしたという記述がのっていた。
約束の内容というのが、これなのだろうか。

そうだ……二人がまだカルタも覚えていないあの頃、荒巻家に邪魔したさい、
デレがしきりに荒巻に懐いていたのは、そのためだったのか。

笑顔を振りまくデレと、ずっと一人でぼんやり薔薇園をながめていたペニサスの、
年端もいかない表情が脳裏に浮かんだ。


そうか……そうだったのか…。
25年越しのその贈り物に、なんだか内藤は抱き締めてやりたい気持ちになった。

ぜひとも、この愛しい薔薇を死者への供物にしてみよう。

先日デレの名を刻んだばかりの、遺骨のない二人の墓に、線香と一緒に捧げよう。




35 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 23:16:52.78 ID:xJz3jwHU0
雨があがった。もとより太陽の沈みどきだったので眩しいまでの光は見られないが、
雲の切れ間切れ間から、橙いろの光線がわずかばかりに漏れている。

ブーンはやさしく贈りものを指でつつくと、告白文を机の上に置いた。
これからどうするかぐらいはよく理解している。


クー・ルー……との間の、誤解のはらんだ蟠りは、果たしてとけるのだろうか。
狂的な女性なのは嫌というほど把握している。

これからの人生を存分に活用してでも、彼女との和解を望みたい。
自分の余命がどれほどかくらい、内藤は熟知している。
短いタイムリミットだが、それこそが娘たちへの弔いというものだろう。


( ^ω^)「娘……かお」

娘……。いまでは、クーのことを我が子のように考えてしまう。
当初は不気味な魔女めいた印象だったのに、不思議なものだった。
デレとペニサスと、死の三角関係を結んだだけではない、奇妙な因縁をひしひしと感じていた。

   


37 : ◆tOPTGOuTpU :2009/08/02(日) 23:19:49.33 ID:xJz3jwHU0
今日はもう遅かった。誰を呼ぶにしたって、どこか行くにしたって的外れな気がする。
星座もろくに見えないだろうが、もうさっさと寝てしまうに限る。


ペニサス、デレ、クー。

P、D、C。


内藤は彼女らのことを思いながら床についた。
運命に翻弄され絶望に叩き落された少女たちのことを。

明日の予定はブルーローズをみた瞬間から心に決めていた。
ああ、墓参りに行こう。





これからの人生は、償いかはじまる気がした。




                        (ALL MY TRUE LUV 終)


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