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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
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(゚、゚トソン 女子と部活と和スイーツのようです 

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:28:19.70 ID:gcDw1kAE0



季節は四月。この季節盛況な行事といえば、所謂入学式というやつである。
桜舞う、春のうららかな陽気の中で、新しい学校の生活に胸を弾ませ、新入生たちは校門を洋々とくぐりぬける――。
今日の入学式の、校長の挨拶を拝借するとこんな感じだ。

私は、といえば、「新しい学校の生活に胸を弾ませ」た覚えは無い。
どちらかというと長かった受験戦争から解放されたうれしさのほうが強い。
これからの生活を楽しもうなんて気はさらさら起きなかった。

それでも、受験で積み重なったストレスをここですべて発散してやる、とだけは思っていた。
受験に成功したとはいえ、自分の今までの鬱憤、疲労、ストレスはやり場もなく晴れぬまま堂々巡りを続けていた。
そこで、私は部活に入ろうと思った。

中学のときは勉強一本で生活してきたため、部活で汗を流したり涙を呑んだり一喜一憂するなんてことはしていなかった。
とびっきりの部活を。今までの憤懣を一度にあのうざったい青空の向こうへぶっ飛ばしてくれるような部活を。
私はそう願いながら、あの抜けるほど白い校舎の壁に向かって門をかけくぐったのだ。



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:30:12.93 ID:gcDw1kAE0







        (゚、゚トソン 女子と部活と和スイーツ(笑)のようです










7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:31:35.96 ID:gcDw1kAE0


(゚、゚;トソン「うわッ……」


入学式を終えて校舎へ向かおうと思っていると、校庭には人間アーチが出来上がっていた。
それは私たち新入生を歓迎するもののように見えるが、実際は単純に私たちの入学を祝うためのものではない。
所謂、部活の勧誘競争という奴である。

高校の部活勧誘はこんなに熾烈なのか、と私は昇降口へまっすぐ連なる人垣を見てため息をついた。
部活に打ち込むためにはこの学校の部活をじっくり厳選する必要がある、と私は一つ一つのビラを貰っていくが、あまりにも多すぎてきりがない。
このままだとビラもらいだけで一日が終わってしまいそうだ。紙の束を胸に抱きながら、私は嘆息した。


ビラを受け取り終わったのはそれから三時間後で、貰ったビラの枚数は50枚近くにのぼっていた。
この学校は普通の部活だけでも20ほどあるのだが、ちまちまとした同好会や倶楽部などがそれ以上に多く存在する。
同好会や倶楽部、部活として認められるには4人以上の部員が必要になる。

そのうち同好会や倶楽部の設立はどんな時期でも4人そろえば設立が出来る。
部活は4人以下でも設立する分にはかまわないが、設立が出来るのは3月の時点だけで、新入生の勧誘後、つまり4月1日の終日時点で4人がそろわなければ強制廃部となる。
そのため同好会のような集まりにとってこの勧誘競争は宣伝と部員集めのちょっとしたお遊びのようなものだが、部活にとってはそれこそ死活問題なのである。

だから、どんな部活でもこの勧誘競争に参加しているのだ。
私はもともと同好会などというお遊びな集まりには参加する気がなかった。あくまで部活で青春を燃焼させるんだ、と意気込んでいた。
放課後になり、入学式で貰った部活動登録表と照らし合わせながら、部活の勧誘ビラのみを選定して仕分けていく。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:33:21.78 ID:gcDw1kAE0
(゚、゚トソン「あれ?」


合計24の部活動の中で、23枚のビラしかなかった。
これはおかしい、と私は今日の活動を振り返った。
間違いなく、あそこの人垣は一人ひとりチェックしたはずだ。ビラの貰い忘れなどあるはずがない。

それでも心配になった私は、部活動表とビラを入念に照らし合わせた
残り一つの部活動を探すと、どうやら「和スイーツ(笑)部」という部らしかった。

_ ,_
(゚、゚トソン「和スイーツ?」




10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:35:16.42 ID:gcDw1kAE0


見るからにおかしな部活ではあった。
おそらく名前から察するに「和スイーツを食べる部」のようではあったが、それにしては部名がおかしい。
私の記憶では「スイーツ(笑)」とは侮蔑の言葉だったはずだ。
確か、女性が一仕事後に「今日も一日がんばった私へのご褒美(笑)」などとデザートを食べる女性への蔑称だった。

単純な「和スイーツを食べる部」であれば、自身の部を馬鹿にするような部名にはしないだろう。
不思議な部活だ、とは思ったが私の目標上、一つの部活のビラでも逃すわけには行かない。
部室は校舎三階の図書室と書いてあったのでそこに行ってみることにした。





11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:36:55.79 ID:gcDw1kAE0



(゚、゚トソン「ここが図書室ですか」


私が一年間の学校生活をこなす予定である一年教室は二階にある。
教室で黙々と作業をしていた私が、いざ行動に移すのは簡単だった。
三階にあがってすぐわかりやすいところに図書室があったので地図いらずである。

しかし威勢よく来たはいいが、今日部活動をしているかどうかというのはわからない。
配られた部活表には部活名と活動場所しか載せられていないのだ。
学校側としては勧誘ビラに完全に任せきりらしい。




12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:38:49.27 ID:gcDw1kAE0
などと図書室の扉の前でうんうん考えていると、扉の横に、ちょこんと一つ机が置かれ、その上に封筒が束になって積まれているのに気づいた。
机の上に置かれた封筒の束を一つとってみると、そこには綺麗な女性の字で、矢印と「ここに氏名を書いて入室してください」とボールペンで書かれていた。
矢印の下は四角く横広な長方形が切り開けてあり、中の紙に直接書けるようになっている。


あ、これなんかで見たことある、と私は直感し、記憶の道をたどる。
確かデスノートとかいう漫画のやつだ。映画で見たことがある。
書き手に何を書いているのか悟らせないように、こういった工夫をなすのだ。


束の横にはご丁寧にも書き直しが利かないボールペン。
用意周到なことで、と私は心の中で毒づいた。
どうも怪しかったが、疑ってかかっても仕方が無い。諦めてボールペンで指定場所に署名してから、図書室の扉を開けた。


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:40:27.57 ID:gcDw1kAE0





lw´‐ _‐ノv「やあ、少女よ。コイは好きかい?」


扉を開けるとそこは、顔だった。









18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:42:20.66 ID:gcDw1kAE0


(゚、゚;トソン「おおおおおおおおおおおうううううッ!?」

lw´‐ _‐ノv「鯉というのはいいものだ。だって滝を登れば竜になれるんだ。それってすごくね?
       引きニートが一夜にして社長に成り上がるようなもんじゃね?
       つかコイキングなんてギャラドスになっちゃうんだぜ?
       おつきみやま前でコイキング500円で売ってたジジイ涙目wwwwwwwwww
       五月には鯉幟なんてあがるんだぜ? みんなが鯉を見上げるんだぜ?
       鯉SUGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!! 鯉YABEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!」

(゚、゚;トソン「えっ……ちょ、なんですか?」

lw#´‐ _‐ノv「質問を質問で返すなあーっ!!」ドッギャァァ――z____ン

(゚、゚;トソン「ええええっ」

lw#´‐ _‐ノv「私が『コイは好きか』と聞いているんだッ、お前の中学校では、
       『疑問文には疑問文で答えろ』と教えていたのか!?
       さあッ、答えろッッ!! お前はコイが好きなのか? ドゥーユーライクコイ!!?」

(゚、゚;トソン「えっ!? ま、まぁ鯉は好きですが……。池を泳ぐ鯉を見つめるのは好きでした」

lw´‐ _‐ノv「いや、鯉じゃなくて恋」

(゚、゚;トソン「は……?」

从 ゚∀从「あー、そいつシカトしていいぞ。まじめに話しようと思っても無駄だから」




19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:44:59.94 ID:gcDw1kAE0


彼女のマシンガントークに面食らっていると、図書室奥の椅子に座っている一人の女性が私に呼びかける。
またか、というような口調だ。このおかしな女性のトークは、ここの人にとっては周知の事実なのだろう。
彼女はハインと名乗った。フルネームでは「高岡ハインリッヒ」と言うらしいが、どうも長くて人に覚えてもらえないらしい。


ハインとでも気軽に呼んでくれ、と彼女は言った。
さらに、この変人の名前は「素直シュール」というらしい。
呼び名は「シュール」か、「変人」もしくは「廃人」などとさらっとひどいことを言う。


ハインさんはまだ人当たりがよかったが、何かとても嫌な予感がする。
今すぐこの封筒を手にしたまま、いっそ踵を返して出て行ってしまおうか、と後悔する。


封筒に気づかれないように後ろでにまわそうとしたら、封筒がいつの間にか手元から消えていた。




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:47:29.03 ID:gcDw1kAE0


lw´‐ _‐ノv「ヒート! 進入部員の封筒を確保したぞ!」

ノパ⊿゚)「よっしゃ来た! 今すぐ手続き開始だ!」




封筒を持って陽炎のように逃げて去っていく(間違いなく人間の動きではない)彼女を視認したときには遅かった。
もう一人、赤毛の女性が突然現れて、二人がかりでなにやら作業をし始めた。
まず赤毛の人の持っていたはさみが、彼女の手の中でくるくると踊り始め、封筒の口を寸分の狂いもなく直線に切り取る。


滑るようにして封筒から顔を出す書類を、変人のほうが引き出し、どこからともなく取り出した印鑑で朱肉を押す。
ひらりとひらめく書類の、一番上の項が一瞬私の目に飛び込んだ。
「新入部員入部届け」とその紙には書かれていた。反射的に駆け出したときにはもう何もかも遅かった。


滑らかで見とれるほどの美麗な動きで判子をひらめかせたかと思うと、私の署名の横には、もうしっかりと朱印が捺されていた。




22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:49:41.34 ID:gcDw1kAE0


(゚、゚;トソン「ええッ!? と、取り消しです! そんな強引な手で入部決定されても……」

lw´‐ _‐ノv「残念だったな! 貴様は確かにお前の手で署名をした!
       部活動規約には『入部希望者の署名と同意、そして部長の捺印が必要』とかかれている。
       貴様は部活動規約、そしてこの部への入部に同意したも同然だ!」

(゚、゚;トソン「う……くッ! 証拠がないです! 私はだまされて書いたんです! 封筒を見ればわかります!」

ノパ⊿゚)「さっきの封筒は処分済みだあああああ!!」

(゚、゚;トソン「お、おもてにおいてあった封筒n」

ノパ⊿゚)「そちらも焼!!却!! したぞおおおおお!!!」

( 、 ;トソン「    」


い、いや、まだ手はある。
今すぐ顧問の先生に報告して入部届けを取り消してもらえb


从 ゚∀从「あ、ちなみに言っとくとこの学校一度部活に入部したら一年やめられないぜ」

( 、 トソン




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:53:12.77 ID:gcDw1kAE0


最後の最後で、後ろで傍観していたハインさんにダメ押しされた。
当のハインさんは、あの赤髪のやつは「素直ヒート」ね、「ヒート」って呼ぶといい。
などと私の入部が決定したかのように悠長に振舞っている。


私の前ではがはは、と男のような野太い声で大笑いするヒートさん。
横で私の入部届けを手にして人間らしからぬ動きで(むしろくねくねじゃないだろうかあの人)狂喜乱舞する変態。
暇だ、とかつぶやきながら大あくびをするハインさん。


私の学校生活終了のお知らせです、本当にありがとうございました。
ちーん、と陳腐な鐘の音が頭の奥で鳴り響いた。




27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:55:23.54 ID:gcDw1kAE0


図書室の隅で落ち込む私の肩を、ハインさんがやさしくたたく。
慰めるような声色ではあるが、私の耳には届かない。
もうかまってられるか。私の希望はここで潰えた。


この先の人生が安易に予想出来てしまい、私はしくしくと泣いた。


从 ゚∀从「ま、別にこの部活も悪くは無いぜ」


うんうん、と一人うなずきながら語るハインさん。


lw´‐ _‐ノv「そうだぞ、まあ百聞は一見にしかずというやつだ。
       この和菓子を食べてみるがいい」




29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 17:57:59.74 ID:gcDw1kAE0


そういって変人はこれまたどこからともなく取り出した白い饅頭を私の頭の上に置く。
粉が髪にまぶされて、毛根白髪のようになってしまう。
髪は女性の命だというのに何をしてくれているんだろうこの変人は。


少しカチンと来たがこの人はこういう人なのだと割り切って饅頭を手に取る。
大福餅だぜ、とハインさんが言う。確かに、それは見たところ何の変哲も無い大福餅だった。
白く、薄く粉をまぶされた皮はもちもちと手にやわらかく、その皮の向こうに、黒いこしあんが透けて見える。


そういえば小腹もすいてきている。教室でずっとビラの仕分けをしていたからだ。
私はその甘くやさしい誘惑に負け、一口かぶりついた。




32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:03:31.49 ID:gcDw1kAE0


(゚、゚;トソン「おぐッ」


薄ッ。味薄ッ。
それは普通の大福餅より幾分甘さを控えて作られているようだった。
手のひらサイズの餅だが、あまりにも薄い。甘みが感じられない。


これでは大福餅とはいえないんじゃないか、と一口だけ食べてもてあました大福を眺める。
もう少し甘ければ、いくらだって食べ切れてしまうほど美味いのに。
絶妙な餅の柔らかさと、舌の上にのったあんこのとろけるような舌触りは、絶品といえた。




33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:06:44.43 ID:gcDw1kAE0


ノパ⊿゚)「どうだあああああ??」


赤髪の女性が声を張り上げる。数メートルと遠くにいないんだから、そんなに大声を出さないで欲しい。
お世辞でも言って切り抜けようかと思ったが、それは失礼な気もしたので正直な感想を口に出した。


(゚、゚トソン「甘みが足りない気がします。もうちょっと甘くしても……」

ノパ⊿゚)「そうか、うん! それでよしだ! いい勘してるぞ、トソン!」


お前は見込みがあるぞおお! と女性は満足そうである。
喜びで気分が高揚しているため、さらに大声で轟いた。この人は演劇部か合唱部にでもいったほうが向いてるんじゃないだろうか。


lw´‐ _‐ノv「部活動の人数合わせにしてはよく出来たセンスだ」

(゚、゚;トソン「やっぱり私人数合わせですか」




34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:08:33.78 ID:gcDw1kAE0

部室に入ったときに三人しかいないからうすうす感づいてはいたが。
やはりこの部活、人数が一人足りなかったらしい。
不審者の曰く、今年一人、先輩が卒業したせいで部員数が危うくなったそうだ。


わかってはいたがなんだかむかつく。
というかこの変人の上から目線な口調がいらつく。
なんかえらそうで嫌だ。


次に、ハインさんが私にちょっと大き目の湯飲みを渡す。
中身は緑色の液体だった。入っている湯飲みの半分以下程度の分量である。
液体は微妙にあわ立っていて、ほんのりとお茶のいい香りがした。


从 ゚∀从「次はそれを飲んでみてくれ」




35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:11:16.05 ID:gcDw1kAE0


ここまで来て、やっと私は合点がいった。もしかしてここは茶道部なのではないだろうか?
おそらくこれは抹茶なのだろう。緑色をしているし、ほんのりとあわ立っているのはそれこそ本格的な抹茶らしい。
一度私も抹茶をいただいたことがあるから、抹茶がどんなものかは知っていた。


抹茶はお茶菓子の甘さを控えるために、少し苦く出来ている。
となれば和菓子が薄味なのだから、この抹茶はあまり苦くないようになっているのだろう。
そこまでわかれば怖いものは無い。


私は一気に液体を嚥下した。



(゚、゚トソン「…………? 何の変哲も無い水……ですか?」

从 ゚∀从「……本当にそうかな?」



36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:13:31.72 ID:gcDw1kAE0

(゚、゚;トソン「…………!? うぐぉっ、ごふぇっ、ゴホァッ!! しょっぱ!!」


最初は違和感をあまり感じなかった。
というか、漂う抹茶の香りから、苦めの抹茶を想像していたのだが、そんなことはなく、寧ろ水のようだった。
だが、後からこの液体の異常を察した。


抹茶じゃない。緑色ではあるが、抹茶のような苦味を持っていない。
しょっぱい。塩水だこれ。しかも濃塩分。


lw´‐ _‐ノv「うむ、それでいい。じゃあ今度はその塩辛さが消失してしまう前に、大福を食え」


変人の含みのある言い方は、どうみても私を大福へと誘導させるような口調だった。
何か罠がしかけられている気もしたが、鼻腔から咽頭までを占める塩辛さのせいで、私の選択肢は絞られていた。
あまりにも余裕の無かった私は、変人の言うとおりにすがるような気持ちで大福にかじりついた。


そのとき、私は新しい境地にたどり着いた。




37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:16:54.52 ID:gcDw1kAE0







           大福が、甘いのだ。









38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:18:40.30 ID:gcDw1kAE0



さっきまで薄かったはずの大福の味わいが、先ほどより数段の甘みを増して口内に広がる。
それは、普通の大福餅と同じような、和菓子としての甘さであった。
それにあわせて、大福餅の素材の一つ一つが歓喜の歌声を上げる。


具材同士の微妙たるハーモニー。薄味のせいで損なわれた餅皮とあんこの触感が、一度に美味スイーツの味わいとして昇華する。
味覚を占領していた塩気も、いつの間にか成りを潜めている。
いや、違う。塩味は消え去ったのではない。大福の少しの甘みと手を取り合って、甘さへと移ろい変わっていったのだ。


まるで塩味と薄味が混ざり合って、化学反応のようにスイーツを作り上げたみたいだった。
私の感覚の中で、絶対に交わりあうことの無かった塩と甘味。
その常識が、今この瞬間にまるごと覆されてしまった。




40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:20:55.27 ID:gcDw1kAE0


lw´‐ _‐ノv「塩キャラメルというものがある。
       あれというのは、もともと甘いキャラメルに塩を加えることで、甘みをよりいっそう引き立たせたものだ」


驚きに目を白黒させる私に、変人がふふふ、と小さく笑いながら解説をする。
いや、変人とは少し違う。初対面の、雲をつかむような正体のわからない、不自然な彼女とはまるで違う。
その堂々たる姿や、神々の落とし子のように。


lw´‐ _‐ノv「さらにスイカやグレープフルーツに塩を少量かけることで、甘酸っぱさとしょっぱさが昇華して甘さへと変わることがある。
       これはその原理を応用した和菓子だ」


窓から差し込む斜陽を受け、燈色に煌く彼女の姿が、神々しくも感じられた。
私はいつの間にやら、真剣に彼女の話に聞き入ってしまっていた。
神の信託のような。母親の子守唄のような。天使の甘いコーラスのような。

彼女の歌うような言葉たちは、数学者の華麗なる証明のように実に論理的で、筋が通っていて、他の追随を許さなかった。
彼女は仕事を終えた、とでもいう風に後ろへ引き返す。
代わりにハインさんが前に出てきて、解説を引き受ける。


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:23:28.82 ID:gcDw1kAE0


从 ゚∀从「この部は茶道部じゃない。この部は新しい和菓子の道を切り開き、まったく新たなスイーツを誕生させる部なんだ。
     だからこそ和スイーツ部。和菓子を極め、スイーツへと変化させる究極の部だ」

(゚、゚トソン「先輩……!」


さっきまで馬鹿にしていた彼女たちに、尊敬の念が突然芽生えた。
女神の視線に魅入られてしまったような。人魚たちの誘惑のままに、海原の深淵へもぐるような。
彼女の言葉は、独裁的に私を支配した。


私は、オレンジの光が幻想的に映し出す図書室と、彼女たちを前にして静かに悟っていた。
この人たちは変人や変態なんかじゃない。世界を救うためにこの世に光臨した、和スイーツ職人たちなんだ。
なぜ、そんなこともわからなかった。なぜ、今まで気づかなかった。


私はなんと、おろかなのだ。




42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:26:34.08 ID:gcDw1kAE0


ノパ⊿゚)「どうだ? 少しは考え方が変わったんじゃないか」

(;、;トソン「先輩……っ!」


私は感動のあまり涙を流していた。
それは、サナギがチョウに生まれ変わる瞬間、殻をはいで、外の世界へ旅立つ瞬間に似ていた。
今、新しい私が、古い自分の生き方を破ってここに誕生したのである。


図書室の薄汚れた埃が舞う床に、体が汚れることも気にせずに頭を擦り付けた。
私は必死に土下座をしていた。
三人はおい、よせよ、といいながらも、私を止めようとはしなかった。


三人は、都村トソンの人生そのものを賭けた土下座を見て、その姿に熱烈な意思を感じたのだ。
妄信や、刹那の感情、一瞬の信頼ではない。
永劫の忠誠を主に誓う、聖なる騎士の礼に似ていた。


次の瞬間には、私の口から言葉が突いて出た。




44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:28:42.16 ID:gcDw1kAE0


(;、;トソン「私も部員にしてください! 先輩たちと同じ舞台で、私も輝きtghtんwpkwsだ」


涙と鼻水を一緒くたにぼろぼろ流し、顔がバケツで水でもぶっかけたかのようにぐしょぐしょになる。
鏡で見たら誰もが笑ってしまう顔だろう。だがそれでも私は泣くことをやめなかった。土下座をやめなかった。叫ぶことをやめなかった。
何度もかんだ、言葉に詰まった、嗚咽で二の句が継げなかった。


彼女たちは、私のひどい顔と、ひどい語りを見て、笑うことはしなかった。
それどころか、ぱちぱちという、弾けるような賞賛の音楽まで耳に届いた。
彼女らは拍手をしたのだ。さざなみのように。しとしとと降る雨の屋根を打つ音のように。


聖者たちの、賛美歌のように。




46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:30:10.68 ID:gcDw1kAE0


从 ゚∀从「和スイーツの世界は甘くないぜ。道のりは長く険しい。そして凄惨だ。
     ――この世界で死んだ奴もごまんといる。それでもいいのか?」

(;、;トソン「構いません! どんな苦労や努力でも積み重ねて見せます。
     たとえ死んでも、私は和スイーツマスターになります!」

ノパー゚)「――その意気だ」


赤髪の彼女が、にこり、と笑った。
それは女神の笑みだった。賞賛であり、歓迎であり、歓喜だった。
彼女の笑みは、私の世界を薔薇色に染めた。


もう何一つ私の視界には映らなかった。
私はこの瞬間に、彼女に恋をしたのだ。
それに気づいたのは、私がもっと和スイーツ職人として成長した、一年後のことだ。




48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:33:14.85 ID:gcDw1kAE0

lw´‐ _‐ノv「おいてめぇら! 何三人だけで青春してんだよ!
       俺を差し置いて青春謳歌なんて、そんな真似はさせねぇぜ?」

从 ゚∀从「部長!」

ノパ⊿゚)「部長!」

(;、;トソン「ぶびょぼう!」


部長は、窓ガラスの向こうに見える夕日を指差す。
もう山々の向こうに沈みかけている夕日は、散り行く一輪の牡丹のように、その命を精一杯に輝かせていた。
陽光に照らされた彼女の指は、まっすぐに、私たちの栄光への架け橋を指していた。


私にはそれが見えた。しかも、はっきりと。
天使が空にかけるはしごのように、たちこめる暗雲の中、一筋の光を、まっすぐに指し示していた。


先輩たちとならどこまでだってゆける。
どんな地獄でも、乗り越えてゆける。
そう、私は明確に感じた。


lw´‐ _‐ノv「新入生の入部祝いだ! あの夕日に向かって走るぞ!
       ぐずぐずするなよ? 準備はいいか? 俺に着いて来い!」

从 ゚∀从 ノパ⊿゚) 「はい!!!!!」  (;、;トソン



49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:36:02.03 ID:gcDw1kAE0


がしゃあん、と窓ガラスが砕け散る。
細かな破片が、夕日の方へ、私たちの足元へ、私たちの足を止めるために、鋭い牙を持って立ちはだかる。
窓ガラスに正面からぶつかるゆえの、その強力な衝撃にも負けず、彼女は夕日へと突進し続ける。


私は部長のその背中に、何者にも負けず、強い志をもって夢への階段を力強く上っていくことの大切さを学んだ。
私たちも部長を見失わないように、その後姿を追って駆け出した。
窓ガラスの破片が足裏に刺さるのもお構いなしだった。


私たちは、未来への希望に溢れていた。

和スイーツの未来へがむしゃらだった。

自分の欲望に飢えていた。

世界の輝きに夢中だった。


私の視界は、今までの人生よりずっと煌いて光っていた。





51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:38:46.73 ID:gcDw1kAE0


「立ち止まるな――強く、強く、歩き続けろ」


幼少の頃におぼろげに覚えていた、交通事故で死んだ母の言葉が鮮明に蘇っている。
たくましい母の生き様が、母の人生が、母の力強さが、私にしっかりと受け継がれていることを実感した。
ありがとう、お母さん――


私は心の中の母に、強く、強く、感謝した。


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:41:04.15 ID:gcDw1kAE0








                私たちの和スイーツへの道は、今、始まったのだ!!













55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/16(木) 18:44:31.96 ID:gcDw1kAE0







        (゚、゚トソン 女子と部活と和スイーツ(笑)のようです










                                完




(゚、゚トソン 女子と部活と和スイーツのようです
ttp://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1247732589/
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大福くいてぇ
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