長岡速報

 
 
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ジョルジュ

Author:ジョルジュ
心母少女最終話更新
完結おめでとうございます。
08/03

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o川*゚ー゚)o達は愛しているようです 

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:02:40.61 ID:jcnwIcey0


「キューちゃんって可愛いよね」

「甘ぁい匂いがする」

「ふわふわのリボンみたい」

「食べちゃいたい」

「可愛いなぁ」

「抱きしめたい」

「小さい箱に入れて、ずーっと閉じこめておきたい」



o川*゚ー゚)o「ねぇ、ねぇ、もっと褒めて!」







3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:03:22.85 ID:jcnwIcey0



三番目
素直キュートは愛すようです





4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:08:05.18 ID:jcnwIcey0

 私にとって『可愛い』は何よりも何よりも大切な事で、そういう言葉を投げかけられる度に本当に本当に嬉しくなる。
 姉さんと違って大きくならないおっぱいも、姉さんと違って全然伸びない身長も、
 ねぇさんと違ってしゅっとした釣り目じゃない団栗眼も、可愛いと言われる要因になるなら、全部全部愛おしい。

 だってキャラメル色の長い髪。か細くて小さい手足。
 姉さん譲りの雪みたいな肌。真っ黒い瞳。
 ねぇこんなに可愛く存在出来ているんだから、きちんとしなきゃ神サマに怒られちゃう。

ζ(゚ー゚*ζ「キューちゃんっ」

o川*゚ー゚)o「なにー?」

ζ(゚ー゚*ζ「えへへ、今日はキューちゃん、何かいい匂いするね。香水変えた?」

o川*゚ー゚)o「んー、あんまり気に入ってないんだけどねー」

ζ(^ー^*ζ「あたしはこの匂いスキだよー」

 真っ白でふわふわのシフォンワンピース。エナメルの小さなストラップシューズ。
 ドットのシュシュや、ボーダーのオーバーニーソックス。口にチャックの付いた兎のリュック。
 甘ぁい香りの苺の香水。ふわふわのきらきら。華奢で可愛いもの、全部が私を彩ってくれる。

 こういう物は皆神サマが作ってくれてるんだ。デザイナーの脳味噌と手を借りて、私だけの為に。

ζ(゚ー゚*ζ「お揃いにしたいなっ。どこの?」

o川*゚ー゚)o「んー、紫生堂のー」



5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:12:54.08 ID:jcnwIcey0






ζ(゚ー゚*ζ『あたしね、キューちゃん、可愛いからスキ』

o川*゚ー゚)o『え? ありがとぉ。デレちゃんも可愛いよ?』

ζ(゚ー゚*ζ『違うよ、あのね、あたしはキューちゃんとキスしたい。えっちなこともしたい。アイしてるの』

o川*゚ー゚)o『……へ?』



6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:15:22.90 ID:jcnwIcey0


 デレちゃんに告白された時、私はちょっと迷ってから頷いた。だってデレちゃんは可愛かったから。
 くるくると巻かれたミルクティ色の髪。長い睫は瞬きする度に小鳥の羽みたいにぱさぱさ鳴りそう。
 丸くてちょっと眠そうな目は何時も潤んでいて、デレちゃんの其処が私はスキだった。


ζ(゚ー゚*ζ『気持ち悪いでしょ? あのね、でもね、スキなの』


 スキとは言っても、アイしてるでは無くて、可愛いテディベアを抱き締めるような気持ちのスキだったから、
デレちゃんが私にそんな感情を抱いていると知った時はとても驚いた。
 私は可愛いって言うのも言われるのも大好きだけれど、レズでは無い。けれど、けれど。




o川*゚ー゚)o「じゃあ今から買いに行こー。確かあの店に入ってたはずだから」

ζ(゚ー゚*ζ「んっ」


 可愛いデレちゃんと可愛い私がキスをしていたら、すごく可愛いんじゃないかな、と思ってしまったのだ。





7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:20:38.97 ID:jcnwIcey0



ζ(゚ー゚*ζ「これだよね。にゅ、結構高いなぁ」

o川*゚ー゚)o「あ、ほんとだねぇ。九千八百円かぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「……キューちゃん、自分で買ったんじゃないの?」

o川*゚ー゚)o「ううん」


 誰から貰ったんだっけな、と私は唇に手を当てる。
 クリスタルカットの香水の壜を両手に納めたデレちゃんが、目をうっすら細めてそんな私を見ていた。ミルキーピンクのマニキュアと、水色の壜。
 あ、あの手可愛い。いいなぁ、写真に撮りたいなぁ。


o川*゚ー゚)o「ああそうだ、盛岡先生だ」

ζ(゚‐ ゚*ζ「盛岡って、……数学の? 盛岡先生?」

o川*゚ー゚)o「うん、数学の盛岡先生」


 私と同年代の子供とは格が違うと言うのを示したいのか、盛岡先生はよく可愛らしい贈り物をくれる。
 例えば小さな宝石のついたネックレス。例えば可愛いシルバーのピンキーリング。例えばちょっと有名で高級な香水。女の子が喜びそうな『大人の贈り物』を。
 私からすれば、相手の趣味もよく分からないのにそういう物を贈るのはどうかなのだけれど、性分として使ってしまうのだ。




8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:24:12.06 ID:jcnwIcey0


ζ(゚‐ ゚*ζ「盛岡先生、が」

o川*゚ー゚)o「そう。あれ、それとも斉藤君だっけ? 小森君、は違うな。何か変な服しかくれないし」

ζ(゚‐ ゚*ζ「……」


 瓶を握りしめたデレちゃんの手が真っ白になっているのに気づいた。マニキュアが剥がれてしまわないか不安になって、私は慌てる。
 ああ、折角可愛いのに。その白い手首に黒いシュシュをつけて、そうして写真を撮りたいのに。


o川;゚ー゚)o「あっそうだ、私あんまりこの香水スキじゃないから、デレちゃん欲しいならあげようか?」


 ことり。
 デレちゃんが棚に瓶を戻した音がいやに大きく聞こえて、私は肩を竦めた。瞬きをする度、睫が羽ばたく音がする。


o川;゚ー゚)o「……デレちゃん?」

ζ(^ー^*ζ「ううん、いらない。この匂い、あんまりスキじゃないし」


 デレちゃんの笑顔は思わず抱き締めたくなるほど可愛くて、私はキスがしたくなった。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:29:24.82 ID:jcnwIcey0










 ベッドの中でぐちゃぐちゃになって、キスをして、抱き合う。
 女の子同士のそういうコウイはなんだか果てが無いし、折角可愛い服を着ても髪を整えても、全部崩れてしまうからあんまりスキではない。
 けれどデレちゃんは何だかそういうのがスキらしくて、だったら仕方が無いかなぁって私は付き合っている。


o川*゚ー゚)o「んー」




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:34:58.31 ID:jcnwIcey0


 絡みつくシーツから逃げるようにして、ベッドから這い出した。
 カーテンが閉められて薄暗い部屋。
 デレちゃんの部屋は可愛い小物や服が一杯あって、何だか小さな宝石箱にぽとんと放り込まれたような気分になる。


ζ(゚ー゚*ζ「何か飲み物、用意、するね」

o川*゚ー゚)o「ん、ありがとー」

ζ(^ー^*ζ「んーん」


 何時も通りちょっと瞳を潤ませて、頬を上気させたデレちゃんは膝まであるティシャツをすとんと被り、部屋から出ていってしまう。
 その間に私はぽとぽと落ちたショーツやブラを拾い上げて、身に付けた。
 一度着た下着を着るのは何だかキモチがワルイけれど、仕様が無い。

 キャミソールを着て、靴下を履いただけの格好になった私はデレちゃんのベッドにもたれて天井を見上げた。染み一つ無い白い天井。
 灰色に薄暗い部屋は深海みたいで、自分がくらげになったみたいな錯覚をする。

 こういう行為に、意味ってあるのかなぁ、なんてテツガクに耽ってみる。セックスっていうのはきっと麻薬と一緒なんだ。バッドトリップとグッドトリップがある。
 デレちゃんと私のこの行為が、セックスっていえるのならば。
 今日のは、多分バッドトリップ。ドクオさんの言うところの、賢者モードって奴だ。




12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:38:19.56 ID:jcnwIcey0


ζ(゚ー゚*ζ「キューちゃん、カルピスで良かった?」

o川*゚ー゚)o「うん」


 戻ってきたデレちゃんは、ストローの刺さったグラスを差し出してくれた。受け取らないまま、それに口を付ける。
 吸い上げれば、口の中に白濁した液体が溜まっていく。なんだかイヤラシい表現だ、と私は目を細めた。


ζ(゚ー゚*ζ「……キューちゃんはさぁ、あたしのこと、スキ?」

o川*゚ー゚)o「え、大好きだよ? だって可愛いもん」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、盛岡先生は?」

o川*゚ー゚)o「ん? ……盛岡先生は、カッコ良いけど、別にスキではないかなぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、じゃあさ、盛岡先生に可愛いワンピースあげるからセックスしてって言われたら、する?」

o川*゚ー゚)o「えー、だって先生の選ぶ服って子供っぽすぎてあんまり、」


 デレちゃんはにっこり、と笑った。私の膝を跨いで、肩を掴む。
 細くて白い指が、壊れ物を触るみたいな動きで私の肩を撫でた。それが何だか心地よくて、顎の下を撫でられた猫みたいに私は目を細める。




14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:42:48.93 ID:jcnwIcey0



ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、キューちゃん」

o川*゚ー゚)o「なーに?」

ζ(゚ー゚*ζ「お化粧してあげる」


 デレちゃんは片手に持っていた包丁を振り上げる。きらきらでちょっと綺麗だった。
 その手に銀色のブレスレットをつけて、マニキュアはゴシックな黒が似合うかな、と私は思って、











15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:47:53.16 ID:jcnwIcey0



 あたしは、彼女を愛していたのだ。

 その長くて美しい髪だとか。形の良い爪だとか。画像編集でも施したのかと疑いたくなるような大きな黒目勝ちの目だとか。
 見た目とは裏腹にすとんと頭の上から通り抜けるような澄んだ声だとか。精巧に出来た人形のように細い体つきだとか。
 可愛いものが只管大好きなその思考だとか。勉強がからきしできない馬鹿な所だとか。他人を省みない独善的な性格だとか。


ζ( ー *ζ「キューちゃん、かわいいからスキ」


 けれど彼女は只管自由で。あたしが隣に居ても居なくても構わないというように自由で。
 そんな彼女が、あたしのことを一身にあいしてくれているだなんて端から思っていなかった筈だ。
 彼女の愛は彼女と彼女の家族にだけ注がれていると、あたしはずっと前から知っていた。

 知っていたけどさ。




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:50:16.39 ID:jcnwIcey0


ζ( ー *ζ「スキスキだぁいスキ、アイしてる。だから、なんてさ、いうつもり、無かったのに、ね」


 皮膚を裂いて頸動脈を突き切った包丁が、圧力から解放された血液にまみれてぬらぬらと光る。
 ごぽごぽと呼吸が泡立つ。有らぬ所に流れ込んだ血液。
 柔らかい肉と筋とを断ち切った文化包丁を引き抜き、そっと床に置く。

 昨日掃除したばかりの部屋は、すっかり酷い状態になっていた。
 部屋の片隅に置いた薔薇のポプリの匂いは、当たり前のように霧散している。彼女のつけていた忌まわしい甘い匂いも、それに同じく。


ζ( ー *ζ「キューちゃん、スナオだから。素直すぎるから、嘘つかないから。だからいけないんだよ」


 心臓の脈動と併せて緩く血飛沫を上げ続ける傷口に細い指を差し込む。垂れた頭からは、人形のような長い髪が垂れ下がっていた。
 そのキャラメル色はすっかりドス黒い赤にかさかさになっている。ああ、考えていたとおりだ、と私の口元は緩む。
 口からこぼれた血で桜色のリップがとろけ、真っ赤な紅が差されたように見える。白い顔を半分染めぬいたその表情は冷たい。

 ああ、こういうのをシュウアクだって言うんだね。お化粧、失敗しちゃったな。





18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:53:33.48 ID:jcnwIcey0





ζ( ー *ζ「可愛く殺してあげられなくて、ごめんね」







三番目
素直キュートは愛すようです    了




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 14:58:09.27 ID:jcnwIcey0





 長岡ジョルジュはヘンタイだ。


 そんな言葉はこれまでの中学生活で嫌になる程聞いた。
 何処と無く親しみの隠ったその罵倒語。
 ヘンタイヘンタイといわれつつも、中学二年生のヘンタイという呼称に対するハードルは酷く低い。どうせそんなモンだろうと思っていた。





22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:01:22.26 ID:jcnwIcey0






四番目
素直シュールはおもうようです






23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:04:00.05 ID:jcnwIcey0




  _
( ゚∀゚)「おっぱい見せて」


 中学生の直球に屈折した性衝動とは何かが違うその要望に、僕は二回瞬きをした。
 夕日が窓から差し込む西校舎。長岡は黙っていて、僕も黙っていて、二十五秒間の沈黙の間に長岡の口は十六度ばかり釣り上がった。
 そこから、焦ったように矢継ぎ早に言葉が飛び出る。

  _
( ゚∀゚)「ほら、素直っておっぱいでかいじゃん。なんていうかその、凄い見たいっていうか触りたいっていうか」

lw´‐ _‐ノv「いいよ」
  _
( ゚∀゚)「みせ、え」

lw´‐ _‐ノv「別にいいさ。おっぱいくらい。減るモンじゃあ無いし。僕のおっぱいを見て何が楽しいのか知らないけど。
         見たければ、見れば。あ、でも触るのは勘弁して。くすぐったがりだから」
  _
(; ゚∀゚)「え、え、でも、あ」




24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:07:31.98 ID:jcnwIcey0


 制服のブレザーを脱ぎ、シャツのボタンに手をかける。長岡は口をぱくぱくと開いたり閉じたり忙しい。半開きの手がゆるゆると上下した。
 ああ、その前にタイだな、とリボンタイのホックに手をやった所で、長岡に止められた。僕はそれを二秒かけて確認し、首を傾げる。
 長岡は今にも泣きそうな顔で、唇を震わせていた。印象深い眉は垂れ、情けない子犬の尾のようだ。

  _
(; ゚∀゚)「……こんなトコで脱いじゃ駄目だろ」

lw´‐ _‐ノv「そうなのかい? 良くわかんないや」


 人目に付かない所で、としきりに主張するので、仕方なく女子トイレに向かった。障害者用の広い個室。
 ねぇ、セックスなんてしないよ、と念を押すと、するかよバカ、セックスとか言うなと怒られた。換気扇の音が五月蠅い。
 丸襟シャツのボタンを一個ずつ外していくと、長岡は食い入るように見つめた。何だか気まずいなぁと僕は手がふるえる。

 姉さん下がりの水色のチェックのブラが現れた時、長岡の顔がぱぁと輝いた。
 買い物中、可愛い物を見つけた時のキュー姉さんみたいだと僕はちょっと思う。

  _
( *゚∀゚)「……可愛い」

lw´‐ _‐ノv「言っておくけど僕の趣味じゃ無いんだぞ。これは姉さんの、」
  _
( ゚∀゚)「なぁ、ブラの上ってキャミソール着たり、しないのか」

lw´‐ _‐ノv「……だって暑いじゃないか。冬は着るよ」




25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:10:03.01 ID:jcnwIcey0


  _
( ゚∀゚)「へえ」

lw´‐ _‐ノv「しかし詳しいな、君」


 シャツを脱ぎ、手を後ろに回してホックを外す。上半身すっ裸にスカートを履いているって、何だか間抜けだなぁと僕は内心溜息を吐いた。
 僕が片手にブラを持て余しているのに気づいた長岡は、意を決してといった風に手を差し出す。見て良い? と呟いた声と指先は酷く震えていた。


lw´‐ _‐ノv「いいよ。というか、おっぱいにはノータッチかい。二重の意味で」
  _
( *゚∀゚)「……うわぁ」


 ブラのストラップをそっと摘み上げた長岡は、不穏に瞬く個室の電灯に透かすようにする。綺麗に発言をスルーされた僕はちょっと眉を潜める。
 おっぱいが見たいって言ったのは彼だったのに、それよりも下着に興味を示されるだなんて心外だ。そんなに貧相な積もりはないのだけど。
 寧ろ邪魔なくらいなんだが。Eカップ。放って置いたらもっと大きくなるのかな。それはそれで興味が在る。

  _
( *゚∀゚)「可愛いっ、な。いいな」

lw´‐ _‐ノv「……? そんなに気に入ったの、そのブラ」
  _
( *゚∀゚)「っう、ん」




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:13:08.67 ID:jcnwIcey0


 僕のブラを半ば抱き締めるようにして長岡は頷く。いや何抱き締めてんだと言いたいが、黙って首を傾げるだけに留めた。
 しばらくそんなことをやっていると、ふと真顔に戻った長岡が僕にブラを押し返した。

  _
( *゚∀゚)「な、なぁ、おれが言うのもあれだけど、素直、恥ずかしくないのか」

lw´‐ _‐ノv「恥ずかしい?」


 僕の貧相に生白い腹に一段折り曲げられたスカートがくっついている。汗がうっすら滲んでいた。だが不思議と羞恥心は無い。
 大体、何だか僕は自分のこの胸にくっついている物体に違和感を感じてならないのだ。触ってみても、揉んで見ても、何だか邪魔なものとしか感じない。


lw´‐ _‐ノv「さぁ……僕ってあんまり自分が女って感じがしないんだよね。おっぱいも、邪魔というかなんというか」
  _
( ゚∀゚)「……おれは、羨ましいよ」

lw´‐ _‐ノv「は」


 うつむいた長岡は、スラックスを握りしめて言う。





28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:17:21.22 ID:jcnwIcey0

  _
( ゚∀゚)「おれは、あたしは女の子に生まれたかった。おっぱいのおっきい女の子に」

lw´‐ _‐ノv「……えーと、そういう性癖の、類の」


 性癖とか言うな、と長岡はちょっと僕を睨む。
 換気扇が僕と長岡の上でくるくると回っていた。

  _
( ゚∀゚)「そうだ、あたしは多分ヘンタイなんだ。ちんこなんて要らないから、おっぱいが欲しかったよ。素直が羨ましい」

lw´‐ _‐ノv「そ……なん、だ」


 今にも泣きそうな顔の長岡の手は、握り締めて真っ白になっている。

 彼は、若しくは彼女は、間違えたんだ。
 細胞分裂の仕方を間違えた胚の成れの果てだ。嫌悪感は無かった。僕と、同じ。
 そうして思った。僕はこいつの為に何をしてあげれば、仲良くなれるんだろう。




30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:22:59.76 ID:jcnwIcey0


lw´‐ _‐ノv「なぁ、長岡、このブラ、あげようか」
  _
( ゚∀゚)「へ?」

lw´‐ _‐ノv「あ、いややっぱり使い古しは悪いか。サイズはどれくらいが良い? どんなデザインにしようか。僕が買ってきてあげる」
  _
( ゚∀゚)「なに、を」

lw´‐ _‐ノv「何って、下着だよ。女の子ならそれくらいきちんとしなきゃ駄目だぜ、君」


 友人以上恋人未満。
 そういう関係って、やっぱり憧れるじゃないか。







32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:26:59.93 ID:jcnwIcey0





  _
( ゚∀゚)「……何」

lw´‐ _‐ノv「いや、可愛いなぁと思って。ひらひらー」
  _
( *゚∀゚)「うっせうっせ。止めろ見るな」

lw´‐ _‐ノv「何だよ、化粧道具とか買ってきてあげたのは僕だぞ、化粧品売り場ですげぇ酔ったんだから。恩義くらいは感じろよなぁ」
  _
(; ゚∀゚)「うっ」

lw´‐ _‐ノv「しかし、姉さんの服のサイズが合ってて良かったね」


 どうしようも無い腰骨なんかの骨格は、ワンピースで覆い隠されている。端から見たら完璧なる女の子。
 中から見ても完璧なる女の子。一点を除き完璧なる女の子の長岡をもう一度、頭からつま先まで舐めるようにみる。
 僕の額にはどうしようも無い貧血でと痛みで脂汗が浮いていて、目は霞むようだったけれど、長岡が可愛らしい事だけはわかった。

 あ、やばい。やっぱろ僕のタイプだこいつ。どうしよう、告白したい。
 ああ、でもこの関係を壊したくない。もしも振られたらどうする? もうきっと立ち直れない。



34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:29:43.39 ID:jcnwIcey0



  _
( ゚∀゚)「……なぁ、これ、汚しちゃっていいのか?」

lw´‐ _‐ノv「姉さんのお古だし、全然へーき。携帯も有るし、安心してやっちゃえ」
  _
(; ゚∀゚)「やっちゃえったってなぁ……」

lw´‐ _‐ノv「僕でも出来たんだ。お前も出来るよ。女は度胸だろ」
  _
( ゚∀゚)「……はいはい」


 そんな僕の悩みも知らない長岡が、ワンピースを捲りあげる。
 僕の血がねっとりと付いた包丁を握り、







35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:30:33.67 ID:jcnwIcey0











四番目
素直シュールはおもうようです    了






37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:34:09.11 ID:jcnwIcey0



 かちり、と時計がまっすぐになる。
 かちり、蛇口が軋む。
 かちり、コンロに火がつくか確認する。
 ヒートはにっこりと笑った。底冷えするような冷たい笑みと、高熱を出したような熱っぽい瞳が、それを映す。







39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:37:16.58 ID:jcnwIcey0




三番目
素直ヒートは食べたいようです
 






40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:40:03.34 ID:jcnwIcey0
 




ノパ⊿゚)「姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん」


 切り刻む。切り刻む。
 筋繊維の切れる感触。白い筋の千切れる感触。ぬめぬめと手にまとわりつく、死体の柔らかさ。
 効率の良い切断だけを求めた包丁は、木製の板の表面ごと肉を切っていく。
 ぐちゃりと形が歪む度、ヒートの形の良い眉も僅かに歪んだ。うまくきれないな、今度とがなきゃ、という呟きが洩れる。


ノパ⊿゚)「姉さん姉さん姉さん、美味しいよ。美味しいよ。残さず食べよう。余さず食べよう。美味しいよ、ねぇ。姉さん姉さん姉さん姉さん姉さん」


 小指の先程に切り刻まれた肉を愛おしげに掬い上げ、赤茶色の液体に落とす。
 ぴちゃぴちゃと手に跳ねた其れを真っ赤な舌で舐め取った。舌を刺す塩味にヒートの口元が釣り上がる。
 端では透明な水に満ちた鍋が湯気を吐き出している。からから、と水蒸気が鍋を揺らした。



42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:44:18.37 ID:jcnwIcey0


ノパ⊿゚)「姉さん姉さん、楽しみにしてるよ。まだまだ、あとちょっと」


 ごろごろと転がっている小さな拳大のそれに包丁をあて、するすると器用に剥いていく。白く滑ったそれを、さくさくと分断した。
 包丁に張り付いた分も丁寧に剥がしとり、ぐらぐらと煮だした鍋に放り込む。


ノパ⊿゚)「ああ、姉さん。姉さん。姉さん。姉さん」


 水の中で踊る白い固まりを見て、くすくすと笑う。時計の分身がかちかちと身を固めた。それに眉をひそめてヒートは笑みを止める。
 ぬるぬると光る包丁を丁寧に洗い始めた。刃の腹に指を押し当て、ぬめりをこそげ落とすように流水の中へ。
 スポンジに手を伸ばしかけるが、まぁいいか、と止める。


ノパ⊿゚)「あ」


 乱暴な手つきが仇となったのか、水道水に真っ赤な血が混じった。痛みにヒートの顔から表情が抜ける。が、すぐに口元を弛めた。
 水を止めても止まらない血に口づけ、舐め取る。暫くしてから戸棚から絆創膏を取り出し、片手で器用に貼り付けた。



44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:48:08.48 ID:jcnwIcey0


ノパ⊿゚)「不味いなぁ、ワタシの血は不味いなぁ。姉さん。姉さん姉さん姉さん」


 白いそれを鍋から掬い上げ、ザルに落として水道の流れにつっこむ。隣の鍋では油と具が煮立ち、ぎとぎとと揺れていた。
 調味料を混ぜ合わせたカップも控えている。浅い皿の中で酒と醤油に浸かっていた鶏肉を、鍋の中に落とす。肉が焼ける音が悲鳴に聞こえた。
 油が跳ねては落ちる。

 僅かに浮いた葱とショウガは慌ただしく揺れ、鶏肉は見る見る内に縮んでいく。
 完全に堅く縮んだのを確認して、甜麺醤と老酒、スープと砂糖と花椒、酢を混ぜた物を入れたカップを傾けて木へらで混ぜ合わせる。
 コンロを操作して強火に。ぐらぐらと煮立ったのを確認したら中火に。


川 ゚ 々゚)「あ、いいにおーいー」

ノパ⊿゚)「姉さん、お帰り!」



 先ほどぬめりを流した里芋を鍋に入れて、くつくつと、汁気が五分の一になるまで煮たら、鶏肉とさといもの煮込みの完成。







47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:51:47.32 ID:jcnwIcey0







三番目
素直ヒートは食べたいようです    了
 




48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:54:34.76 ID:jcnwIcey0





まちがつなのか。はれ
スズキとあそんだ。きゅーちゃんがおしえてくれたかわいいおみせで、ペンと、のーとをかった。
そのあと、今日は、尺骨にそって、シャーペンで、八センチの傷をつけた。

まちがつじゅうくにち。はれ
スズキとあそんだ。こうえんのアスレチックであそんだ。
スズキがおちたのでおもしろかった。わらっていたらわたしもおちたのでいたかった。
そのあとクーちゃんがごはんをつくってくれた。
クーちゃんから包丁を借りて三センチの傷をつけた。穴空き包丁にはソースが付いていたので、後で消毒をしてあげた。

まちがつはつか。あめ
きょうはスズキがかぜをひいた。






49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 15:57:42.08 ID:jcnwIcey0




一番目
素直クルウはかくようです






50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:00:43.24 ID:jcnwIcey0

まちがつにじゅうろくにち。くもりのちあめ
スズキがげんきになったので、ごはんをつくってもらった。
ケロイド状になった先月の傷跡をカッターナイフで切り開いた。血は出なかった。

まちがつじゅうななにち。はれ
きょうはスズキといっしょにびょういんへいった。
せんせいとおはなししてから、ヒーちゃんといっしょにおかいものへいった。ヒーちゃんはほうちょうをかっていた。
かしてといってもだめっていわれたから、仕方なく伸びた爪で昨日の傷を広げた。膿んでいたので、それを取り除いた。

はちがつじゅうはちにち。はれ
シューちゃんから借りた果物ナイフで五センチの傷と七センチの傷と十五センチの傷と二十一センチの傷と三センチの傷をつけた。
血が止まらなかったので、クーちゃんにたすけてもらっててあてをした。

はちがつにじゅうにち。あめ
肩に傷をつけた

はちがつさんじゅういちにち。あめ
スズキの左腕に描いた絵が完成した。中々上手に描けたと我ながら思う。スズキはよくできましたと褒めてくれた。嬉しかった。
ただ、本当に完成するまでは後少しかかると思う。ナナメの腕の包帯がとれるのが待ち遠しい。
今度は右腕に描こうと思う。
きょうはあめがずっとふっていてすこしだけつまらなかった。




51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:03:31.96 ID:jcnwIcey0








/ ゚、。 /「……何にせよ、俺の責任ですから」

川 ゚ -゚)「ふむ、君、狂ってるね」

/ ゚、。 /「クルウちゃんに付き合うなら、これくらいフツウですよ」

川 ゚ -゚)「クルウ姉さんと付き合おうなんて考えが、まず可笑しいさ」

/ ゚、。 /「……? ソウデスカ?」

川 ゚ -゚)「だってそうだろ? あんなヤンデレにも成り得ない、ただの狂人に付き合うだなんて、君」

/ ゚、。 /「ヤンデレ?」

川 ゚ -゚)「……ふぅむ、どうもドクオに影響されていかんね」



52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:07:31.23 ID:jcnwIcey0

('A`)「うるさいな」

川 ゚ -゚)「起きてたのかよ、君」

('A`)「黙ってただけだ」

川 ゚ -゚)「じゃあちょっと黙って居てくれよ。家族の話だ」

('A`)「……俺も家族だけど」

川 ゚ -゚)「わかってるから」

/ ゚、。 /「……ゲージュツカってのは皆狂人でしょう。ゴッホもピカソもルノワールも岡本太郎も、ベートーベンや黒澤明も」

川 ゚ -゚)「君の芸術家の枠付けが良く分かんないがね。クルウ姉さんが芸術家だなんて、ちょっと褒めすぎだよ」

/ ゚、。 /「クルウちゃんの描く絵が、俺は好きでした。だから、俺がクルウちゃんの芸術となれるなら、そんなシアワセは他には無い」

川 ゚ -゚)「……君の生き様はある種芸術的だ」

('A`)「芸術的なバカだ?」

川 ゚ -゚)「私の発言の括弧を勝手に外すなよ、お前」

('A`)「……」



53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:11:47.31 ID:jcnwIcey0

川 ゚ -゚)「無視か、おい。……しかしね、それ、痛いだろ?」

/ ゚、。 /「いえ、全然」

川 ゚ -゚)「もの凄い勢いで嘘吐いたな君。そんな肉もぐずぐずになった腕が痛くない訳がない。毎日毎日切り刻まれて、神経が切れたかい?」

/ ゚、。 /「さぁ、どうなんですかね」

('A`)「……動いてるんだし、神経はつながってるんじゃない? 神経ってあれで結構深いとこにあるし」

川 ゚ -゚)「そうなのか?」

('A`)「知ったかぶりだ。『手首の動脈切るには、静脈切って腱切って、そこからさらにぶっとい神経を切らなきゃいけない』ー? って何だっけな。元ネタ忘れたな」

川 ゚ -゚)「お前はその引用癖を直した方が良いんじゃないか。厨二臭い」

('A`)「ケロイドになっちゃってる傷のとこは死んでるだろうけど」

/ ゚、。 /「デスネ」

('A`)「……クルウさん、あんまり力無いのか?」

/ ゚、。 /「いや、結構強かったハズですけど」

('A`)「じゃあ、ちゃんと手加減してんだ」

川 ゚ -゚)「……その気遣いは、我が姉ながら良くわからないよ、姉さん……」



54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:17:46.53 ID:jcnwIcey0

/ ゚、。 /「キャンパスは大事に扱いたいんですよ、きっと。じゃなきゃ長持ちしませんし」

('A`)「そう自虐に走るなよ、鈴木くん。きっとクルウさんは、」











六月八日。晴れ
コンクールに出す絵の題名が決まった。『青の時代』ピカソの一時代からの引用らしい。
というのも、この題名、私ではなく同級のスズキくんに考えてもらったのだ。モデルをやって貰ったりと、今回彼には多大な迷惑をかけてしまった。
いつかお礼にご飯でもご馳走したいと思う。
学校の帰りにマリンブルーの絵の具を買い足す。減りが早い。



56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:21:39.43 ID:jcnwIcey0


六月九日。曇り
今日の夕食はヒートが作ったらしい。オムライスのケチャップライスが多少べたついていたけれど、美味しかった。
スズキくんの事を話すと、『私が腕を振るうか!』と張り切ってしまった。

六月十日。曇り後小雨
クーが彼氏を連れてきた。少し暗そうだが、気遣いの出来る好青年だ。流石私の妹、見る目がある。
私の口調を真似しだした時はどうしようかと思ったが、安心した。

六月十一日。雨
放課後、椎名さんの誕生日会に参加していたら今日のぶんの制作が出来なかったので、絵を持ち帰る事にした。
夜も遅かったので、スズキくんが送ってくれた。ご飯を食べる約束を取り付けてしまった。どうしよう。
居ても立っても居られず、夜になってから部屋の掃除をして、キュートに怒られてしまった。

六月十三日。雨


ろくがつさんじゅうにち。あめ
きづいてしまった。きづいてしまった。
雨が、あおがあおがあおが。
くるまが。あめが。みずみずみずみずみずみず。
かあさんがとおさんが
かあさん
あいつのせいだ




57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:23:29.86 ID:jcnwIcey0

しちがつふつか。くもり
えをかきなおすことにした。キャンパスが壊れてしまったので、スズキにたのん
でつかわせてもらうことにした。


ろくがつみっか。はれ
シューちゃんが病院へいった。
おとこのこになってかえってくるっていっていたので、たのしみにおもう。おとうとははじめてできる。
キューちゃんはかえってこない。クーちゃんが心配だといっていた。

ろくがつここのか。くもり後はれ
キューちゃんがかえってきた。なんかすごいちっちゃくなっていた。
クーちゃんはおとうさんとおかあさんのところへいったといっていた。ヒーちゃんのごはんがおいしい。
このはこがキューちゃんじゃないなら、これはだれなんだろう。

ろくがつとうか。雨
スズキが久しぶりにやってきた。五センチの傷と七センチの傷をつける。
それから深さ五センチの穴を合計十一つけた。これをアタリにしていこうと思う。



くがつふつか。はれ
クーちゃんがかえってきた。
ひさしぶりにみんなでごはんをたべた。ヒーちゃんのごはんはおいしい。キューちゃんのまえにもごはんをおいた。




59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:26:21.04 ID:jcnwIcey0





一番目
素直クルウはかくようです    了







61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:29:20.59 ID:jcnwIcey0

 ドクオには左手を抓る癖があった。正確には抓るだけじゃなく、指を噛んでみたり、爪を立ててみたりと様々なバリエーションがあったのだけれど。
 その所為か彼の左手は肘から先がいつも傷跡まみれで、なんというか凄く厨二病な感じだった。
 私はよくその手当てを買って出ては、不器用なんだから止めてくださいと丁重にお断りされていた。一度酷い目に遭うと人は学習をするらしい。


('A`)「……何でさぁ、腕って二本あるの。一本邪魔じゃない?」

川 ゚ -゚)「いや、別に」

('A`)「俺左手いらねーよ」


 私の家の、私の部屋。
 二人きりの時にそう漏らしては、がじがじと自分の手の甲に噛みつく。
 放っておく訳にも行かないので無理矢理に止めさせると、眉をひそめて此方を睨んだ。


川 ゚ -゚)「……ドクオ」

('A`)「何」

川 ゚ -゚)「モーレツ大人帝国の逆襲借りたから、見ようぜ」

('A`)「おぉ!」



63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:33:18.41 ID:jcnwIcey0



二番目
素直クールは右側にいるようです






65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:36:35.94 ID:jcnwIcey0



 私はドクオと手をつなぐのが好きだった。似たような体温の私達は、手をつなぐとなんとも言えないぬるま湯感覚を味わえる。
 暖まることもなければ冷えることもない。
 私が右手を差し出せば、ドクオが左手でそれを掴む。手すりを持つようなもので、既に感慨は無い。


川 ゚ -゚)「んー、感覚無くなってきたな。ってかもう感覚とかそういうの何って感じだ」

('A`)「ポテト取ってポテト。クー嫌いだろ」

川 ゚ -゚)「さっき自分の分喰ったろうが。塩分過多になるぞ。まぁ、いいけど」


 私の部屋に一つこっきりの白いソファ。それに座らず二人で並んでもたれ掛かっていた。直ぐ前の机にはセッティングされたお菓子やジュースの山。
 チョコレートが溶けかけていて、何だか甘い匂いがする。
 テレビはハードディスクに撮ってあった最近のアニメを写していた。

 六時間耐久アニメレース、とドクオは言ったけれど、六時間くらい訳無いな、というのが三時間を過ぎた私の感想だった。
 そこはかとなく床に座りっぱなしのお尻が痛くなってきたけれども、別にまだまだいける。この前した耐久ドラゴンボール全話より全然平気だ。
 何よりも隣にドクオがいて、話し相手がいる。





66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:39:24.81 ID:jcnwIcey0


川 ゚ -゚)「これ、何か言われてるより面白く無いな」

('A`)「え、俺は面白いと思うけど」

川 ゚ -゚)「いや、何かこう展開が読めるっていうか……次は何見よう?」

('A`)「えー、んー、後二時間くらいだろ? 丁度良いし、映画でも見る?」

川 ゚ -゚)「ああ、確かミュウツーの逆襲が入ってた筈だけど……後は千と千尋の神隠しともののけ姫と、何だ、パプリカ?」

('A`)「あ、俺パプリカ見たこと無い」

川 ゚ -゚)「じゃパプリカにするか」


 バケツの中からは白く冷たい煙がこぼれている。私は皿の上のポテトチップスに左手を伸ばした。噛み砕いて零れたカスが床に零れる。
 ああ、ヒートに怒られるな、となんとなく思う。帰ってきたら掃除をしなきゃ。
 家に帰る前に寄ったファーストフードのフライドポテトをもりもり食べているドクオは、ふと自分の右手を見つめた。





67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:43:22.55 ID:jcnwIcey0
('A`)「片手じゃ、本読めないよな」

川 ゚ -゚)「私が手伝ってやるよ。そのかわり私のマンガも頼んだ」

('A`)「……おう、任せとけい」


 へらっと笑って見せる。そうだよな、これでいいんだ、と呟く声が聞こえたけれど、何も聞こえなかったことにした。
 冷たい匂いがする。アニメのエンディングが始まったので、左手でリモコンを操作。
 ドクオはポテトに飽きたのか、チョコレートに手を伸ばしていた。

 額に浮いていた冷や汗を左手で拭う。

 カーテンを閉めた窓からは夕陽が覗いている。時計は午後七時を差していた。
 ぼんやりとリモコンを操作しながら、保険はきくんだろうかとか、何日くらいで退院できるんだろうとかいう色んな不安が頭を過ぎる。
 ヒートに怒られるかな、と呟くと、俺も一緒に怒られるから、とドクオが言った。


川 ゚ -゚)「ドクオだけじゃ心細いんだが」

(;'A`)「ええ……じゃあシューくんと長岡さんも一緒に怒られてもらおう」

川 ゚ -゚)「おお、心強いな」

(;'A`)「ええええ、まぁ良いけど、何か複雑」


 映画が始まった。
 私の部屋のテレビはお世辞にも大きいとは言いがたいので、迫力もスペクタクルもあったものではないのだが、気にしない。
 片手でウェットティッシュの蓋を開け、手を拭う。ドクオにも差し出した。


68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:45:40.58 ID:jcnwIcey0






('A`)「……うーん、思ったよりも短かったなぁ、六時間」

川 ゚ -゚)「まぁ、ずっとアニメ見てたから、一クールみたら経っちゃうしな」

('A`)「しかしパプリカ面白かった。これ原作誰だっけ? 町田康?」

川 ゚ -゚)「何でだよ、筒井だぞ」

('A`)「あれ、そうだっけ。まぁ、いいや、じゃあそろそろ連絡する?」

川 ゚ -゚)「ん、そうだな」

('A`)「……何か、間抜けな光景だ」

川 ゚ -゚)「え?」


 片手に携帯を持ったドクオはちょっと黙ってから、ふと顔を俯けた。
 咽喉に引っ掛かったような笑い声が聞こえてくる。なんだよ、と私は思わず口を尖らせた。
 引っぱたいてやる。



70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:48:58.79 ID:jcnwIcey0


('A`)「だって、二人して並んで片手バケツに突っ込んでるって、相当あほみたいだと思わないか」

川 ゚ -゚)「確かにそうだが、お前が言い出したんだぞ、おい」

('A`)「そうなんだけど」


 ひっひと引き攣った笑いが聞こえてくる。正直むかつく。
 もう一発叩いてやろう、と左手を振りかぶると、「あのさ」と沈んだ声が掛かった。
 あんまりに弱弱しいその声に毒気を抜かれて、手を降ろす。


川 ゚ -゚)「何だ」

('A`)「うん、あーっと……」

川 ゚ -゚)「はっきり言え」


 机の上は、食べ残されたチョコレートが蕩けて甘い甘い匂いを放っている。
 テレビは真っ暗で窓の外も真っ暗だった。空調の音だけが嫌に大きく部屋に響いた。俯いたドクオの髪が風邪に揺れている。
 私の右手がこの髪を触ることはもう一生無いんだと思うと、何だか少しだけ泣きたくなった。

 代わりに左手でなでることにした。



71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:54:39.89 ID:jcnwIcey0


 ホームセンターへ行って、バケツを用意した。序に一緒におが屑も買った。
 その後スーパーでお菓子をしこたま買い込んで、ジュースを買って、ファーストフードに寄って、それからドライアイスを用意した。
 部屋に入ったら先ずドライアイスをバケツに入れて、それからおが屑をそこに突っ込んだ。舞い散って大変なことになった。


川 ゚ -゚)『やべぇ、ヒートに怒られる』

('A`)『帰ってきたら掃除しろよ』

川 ゚ -゚)『お前も手伝えよ』

('A`)『わかってます』


 それから、お菓子の袋を開けて、ジュースの蓋を開けて、ハードディスクをレコーダーに入れて、バケツをソファの前に持っていった。
 とすんと座ったのは、何時ものとおり、私が右側。ドクオが左側。
 並んで歩くときと同じ順番で。

 それから念のためにトイレに行って、じゃあ始めようか、と私達は同時にバケツに片手を入れた。





72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 16:57:34.20 ID:jcnwIcey0


 手が凍れば血液が止まって、切断する以外の処置は無くなる。
 その知識を仕入れたのは私だった。


('A`)「……今更なんだけどさ、本当に良かったのか?」

川 ゚ -゚)「何がだよ」

('A`)「俺に付き合って、手」

川 ゚ -゚)「ものスッゴイ今更だな」

('A`)「だから今更って言ったじゃん」

川 ゚ -゚)「……別に全然構いやしない。まぁ確かに、生活は物凄い不便になるだろうけど、お前が助けてくれるんだろ?」

('A`)「そうだけどさ、」

川 ゚ -゚)「だったら、右手なんて要らないんだよ」


 私は、お前と繋げる左手さえあればいい。
 ドライアイスに突っ込んだ右手が泣くな、と思いながら私はドクオの頭をなでた。
 左手を凍らせたドクオは、私の手をやんわりと振り払ってから、携帯を開く。かすかに震える右手が押すのは、三桁の数字。




73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 17:01:56.40 ID:jcnwIcey0



('A`)「救急車、お願いします」

川 ゚ -゚)「なぁ、ドクオー」

('A`)「えーっと、手をですね、ドライアイスに突っ込みました」

川 ゚ -゚)「糸でさ。赤いのでさ、指結んだりとかしたらすごいロマンチックじゃないか?」

('A`)「六時間ずっと突っ込んでました」

川 ゚ -゚)「いや、この前ラノベのヤンデレがやってたんだけどな」

('A`)「……住所、言いますよ? いいですか?」

川 ゚ -゚)「あぁ、でもちょっと恥ずかしいな。……てか聞いてないし」


 電話との会話が終ったら手を繋ごう、と私は思っていた。
 残った右手と左手で、手を繋いで散歩に行こう。やっぱり六時間も座りきりだと腰が痛くってしょうがない。





74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 17:02:54.38 ID:jcnwIcey0






二番目
素直クールは右側にいるようです    了








76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/11(土) 17:04:05.28 ID:jcnwIcey0

o川*゚ー゚)o達は愛しているようです

 end


 
 

o 川*゚ー゚)o達は愛しているようです
ttp://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1247288395/
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